【庭仕事(にわしごと)】太陽と光と水。自然は美しい! でもそれは灼熱「地獄」⁉︎《マンガ&随筆「異種」ワンテーマ格闘コラム》Vol.18 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【庭仕事(にわしごと)】太陽と光と水。自然は美しい! でもそれは灼熱「地獄」⁉︎《マンガ&随筆「異種」ワンテーマ格闘コラム》Vol.18

【連載マンガvsコラム】期待しないでいいですか?Vol.18

◼︎妹・吉田潮は【庭仕事】をどうコラムに書いたのか⁉️

 コロナ禍で突如目覚めたことがある。針仕事と庭仕事だ。なぜか家の中で何か作りたいという妙な欲望がむくむく湧き起こった。昨年はミシンでマスクやムームー(アッパッパというか…要するに家着)を作った。といっても、洋裁の基本のキも知らないので、超自己流。完成したときの徒労感は半端ない。達成感じゃなくて徒労感。あまりにひどい出来だから。縫製の仕事をしている人を心の底からリスペクトした。それでも懲りずにスカートを作成中だが、絶賛難航中。ミシンは確実に腰痛を悪化させるため、気合と時間が必要なのだ。

 一方、庭仕事は太陽光と水があればどうにでもなることが発覚した。過去、サボテンやポトス、パクチーやシソを家の中で育てようと目論んだが大失敗。枯れたり、発芽しなかったり、不味かったりで、「この家は呪われているから植物が育たないのだ」と思い込んでいた。ベランダに出せばよかっただけの話である。あ、庭仕事といっても庭はないの。ベランダなの。土はすべて買っているの。
ちょっとでも育ち始めると異様に嬉しくて、肥料だのプランターだの支柱だのとグッズを買い込んでいる。以前、NHKBSプレミアムで放送していたドラマ「植物男子ベランダー」(田口トモロヲ主演)を思い出す。トモロヲの職業もライターで、色々な植物の栽培育成に手を染めていた。そういえば、彼が住んでいた部屋は我が家と同じような造りだ。ベランダ部分がまるっと露出。ひさしがないので雨はもろに当たるが、日当たり最高の最上階。トモロヲの興奮が今は手に取るようにわかる。

 現在我が家で育っているのは、ミニトマト、イチゴ、パクチー、キンカン、ダリア、カスミソウ、クワズイモ、カネノナルキ、サンセベリア。エアプランツもいる。猫草も常に生やしてある。お気づきかもしれないが、食べられるモノが多い。あとはいただいたり、100均で買ったり、で着々と種類が増えている。

 とにかくすごい勢いで育っているのがミニトマトだ。品種はアイコ。やんごとなき方と同じ名前なので、アイコ様と呼び、宮内庁付侍女の気分で接している。悪い虫がつかぬよう、要らぬ葉は切り落とし、わき芽を摘み取り、花や実の様子を見ては肥料と水を調整し、カラスや鳥に狙われないかと窓辺に注意を向け……仕事にならないじゃないか。とにもかくにもアイコ様に日が当たるよう、日々ベランダで作業。おかげで早起きになった。より日に焼けて、シミも増えた。

 初めはこんなに育つとは思ってもいなかった。種をポットに撒いて、ひとつふたつでも芽が出ればいいなくらいに思っていたら、全部すくすくと育った。大慌てで55㎝プランターを4つ用意し、専用の土も購入。どんどこ、わさわさ、ニョキニョキという擬音が聞こえるくらい生えてくるので、支柱を立てて、今や丈は160㎝近くまで成長した。実も1プランターにつき100個前後。つまり合計400個だ。

 友人に写真を送ったら「トマト農家か!」と笑われた。たわわ。圧巻。アイコ様はとどまるところを知らず、上に上に伸びては、黄色い可憐な花を次々と咲かせている。これで今夏はトマトを買わずに済む。

 すでに赤くなった実を収穫して食べたのだが、味が青い。昨今のトマトは改良を重ね、甘みとうまみを凝縮した濃い味が多いが、私が子供の頃食べていたトマトは青臭かった。その味に近い。懐かしい。塩ふっておやつに食べていた頃を思い出す。

 ところが梅雨に入って、皮が割れてしまう状況が続いた。赤くなったと思ったらパックリと。まるで刃物で切られたような、痛々しい裂け方だ。割れた分はリンゴと煮てジャムにしたり、カンタン酢にぶっこんでピクルスにしたり、煮込んでトマトソースに。トマトってこんなに汎用性あったのかと改めて感心している。というわけで、毎日がトマト祭り。抗酸化作用も高いし、老化防止にも役立つはず(期待)!

 イチゴは「みのり」という品種だ。苗は2本あったのだが、冬に植えて1つは枯れた。もうひとつは一時期、瀕死の状態に。温かくなってからベランダに出したところ、葉の緑が蘇った。そして、小さいけれど花を咲かせて、実も成長した。

 みのりについては、なんというか、母の気分。ひとり娘がどんどん荒れていき、不良になって、スケバンはって、警察のご厄介になっても私には心を閉ざしたまま。「みのり!どうして……(涙)」。それでも雪解けして、春は来る。みのりは改心して、学校へ行き始める。不器用な小さい白い花を筆の先でチョンチョンと受粉してやるように、みのりの向学心と好奇心をできるだけ邪魔しないよう……なんてドラマを考える割に、実は3つしかなっていないんだけどね。でも甘い。ちゃんとイチゴの味がする。実を大きくする方法があるのだろうけれど、ひとまずこれで満足。

 あとは、キンカンだ。これも、冬に食べ散らかしたキンカンの種を土に埋めておいたら、ニョコニョコと芽が出てきた。もちろん木にならないと、実は収穫できないし、基本的に食べたキンカンの種から実がなるまで成長するのは難しいと言われている。まあ、でも、もしかしたら頑張り屋がいれば、木になり、実をつけるかもしれない。30本ほど育っているが、今後は選抜方式だ。育ちがよくなかったり、葉が黄色っぽくなってきたものは間引きしている。実をつけるほどの大きさになるのは、はたして何本あるだろうか。大所帯タレントを育てる芸能事務所社長の気分。

 しかし、猫しか育てたことがない私は、植物(特に野菜や果実)の育て方をまったく知らない。知識もない。それでも農家の人のブログや、肥料メーカーのサイトを参考にする。ポトスやクワズイモが猫によろしくないことも知った。心強いのは、私には先生がいること。観葉植物に関しては長年通っている鍼灸マッサージの先生が詳しい。野菜に関しては姉・地獄が詳しい。ちょいちょい知識をもらいつつ、植物中年ベランダー1年生として踏み出したところである。

 今までにないくらいベランダへの出入りが激しくなったため、網戸の滑りの悪さが気になった。油を差したところ快適な開閉ができるように。ところが落とし穴があった。滑りのいい網戸は猫でも開けられる。先日、夜に2匹の姿が見えなくなり、ふと見ると網戸が開いていた。ベランダを見ると、白黒の塊が「ひゃっほーい!」と言わんばかりに走り回っている。オスのダーだ。なんとかつかまえて家の中に放り込み、メスのメーを探すと、ベランダの柵の向こう側をすまして軽やかに歩いている……メーちゃん、そこは高さ10階だよ! 落ちたら確実に死ぬよ! 心臓バクバクしながら誘導し、ガッとつかまえて事なきを得たのだった。

 この一件で、寿命は3年縮まった。トマトの抗酸化作用が追い付かないくらい、一気に老けた。猫脱走防止の網戸ストッパーと、転落防止ネットをポチった夜。これらを設置するためにも、ベランダ滞在時間はより長くなりそうだ。

 (連載コラム&漫画「期待しないでいいですか?」次回は来月中頃です)

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毎月14、15日頃連載コラムvsマンガ「期待しないでいいですか?」

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吉田 潮

よしだ うしお

コラムニスト

1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。ライター兼絵描き。



法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』、『Live News it!』(ともにフジテレビ)のコメンテーターなどもたまに務める。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より『東京新聞』放送芸能欄のコラム「風向計」を連載中。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』(KKベストセラーズ)、『くさらない イケメン図鑑』(河出書房新社)ほか多数。本書でも登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。



公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/



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