|#02 『傘をさしたもののけ』

 雨の日に現れるのは幽霊ばかりではありません。もののけ、妖怪のたぐいも出没するようです。

 近世の文献をみますと、雨女、小雨坊、濡れ女子(おなご)、雨降り小僧といった妖怪が雨の日に出るとされています。京極夏彦の小説で一躍有名になった豆腐小僧も、雨の日が好きなようです。もっとも、豆腐小僧は出てきても恐くはなさそうですが。

 通学路に出るという水たまり女も、妖怪の一種なのでしょう。

 これは水たまりの中から見上げているという女で、豆腐小僧と同様にとくに悪さはしないようです。しかし、傘女となると、出会うのは遠慮したいところです。傘女は雨の日にトンネルの前に現れる着物姿の妖女で、蛇の目傘をさしているといいます。

 彼女は傘をささずにいる人を見かけると、「送っていきましょうか?」と声をかけてきます。断わってそのままやり過ごせば何ごとも起こらないのですが、送ってもらうことにするとトンネルの中に連れていかれ、そのまま帰ってくることはできないそうです。同様の妖怪に傘ババアがおり、こちらは通学路にいて小中学生を狙うようです。

 さらに恐いのはヒキコサン(ひき子さん)です。

 この妖女は目と口が裂けた恐ろしい顔をしており、子どもの死体を引きずっています。身長が2メートル近くあり、横走りで追いかけてくるそうです。
 しかし、もとは端正な顔だちの普通の少女だったともいいます。恐ろしい顔だちになってしまったのは学校のイジメと両親の虐待のためで、すでに両親を殺している彼女は、子どもたちに対して復讐をしているのだとされます。

 なぜ彼女が雨の日にかぎって現れるのかはわかりません。傷をつけられたのが雨の日だったのでしょうか。彼女は殺した子ども死体をコレクションしているともいうので、妖怪というよりはアメリカのサスペンス小説に出てくるシリアルキラーに近いのかもしれません。

 悲しいのは「雨の日の花子さん」です。

 これは雨の日の下校時、学校の玄関に現れます。生徒たちが次々と帰っていくのに、彼女は傘も持たずにぽつんと立っているのです。
 けれど、可哀想にと思って「傘に入れてあげようか」と言ってはいけません。彼女と一緒に帰ると、あの世に連れていかれてしまうからです。

 花子さんは親のお迎えが遅れ、傘がないまま雨の中歩いて帰ったため肺炎で死んだ少女の霊で、一緒に下校する子を待ち続けているのだとされます。