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「TPPなど関知しない」トランプに組み伏せられた安倍外交

【「現地妻国家」ニッポンの行く末(前編)】〈平貧〉の時代(15)

 ◆従属を自立と混同した国

 最近、わが国では「上級国民」という言葉が流行っています。

 まだ明確な定義はないようですが、「さまざまな特権を享受できるうえ、一般の国民に負担や犠牲を強いても文句をつけられないエリート層」の意味で使われる場合がほとんど。

 裏を返せば、一般の国民が「上級国民」に逆らうことはできません。

 思えば当然の話。

 日本という国そのものが、ある「上級国家」に逆らえないまま、えんえんと従属を続けているのです。

 つまりアメリカ。

 

 拙著『平和主義は貧困への道』で詳細に論じましたが、戦後のわが国はアメリカの「極東現地妻」と呼ばれても仕方のない存在です。

 平和主義のせいで、自分の身を守る意思も能力もないまま、アメリカに従属することで存立と安全を確保しているのですから。

 

 ただし日本も、かつては「アメリカにとりあえず従うふりをしつつ、自分の利益をしっかり確保、長期的には対米自立をめざす」という、二段構えの姿勢を見せていました。

 現地妻は現地妻ですが、なかなかにしたたかだったのです。

 ところが1980年代あたりを境にして、

 「ご主人様にとことん尽くすことこそ、私が真に自立する道!」

 というワケワカな思い込みに陥る。

 

 くだんの思い込みを、ふつう「対米協調路線」とか「日米同盟重視の姿勢」とか申します。

 

 旦那のアメリカにとって、こんな都合のいい話はない。

 現地妻たる日本にあれこれ勝手な要求を突きつけ、苦しめておいたうえで、こう言って恩に着せればいいのです。

 「オレのワガママに耐えることで、お前は強くなって自立できるんだ! 愛していればこそ、オレはこうするんだよ! な、ありがたいだろ?」

 すると現地妻は、世間様、つまり国際社会に向けて、旦那との揺るぎない絆をアピールできた気になる・・・

 

 「大国はみなヤクザのように振る舞い、小国はみな娼婦のように振る舞う」とは、映画監督スタンリー・キューブリックの名言。

 だとしても、大国の現地妻に徹することを自立の道と錯覚する国が出てくるとは、キューブリックも想像できなかったでしょう。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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  • 2018.09.15