自殺の季節。女子アナも、ヴィジュアル系アーティストも、異色の漫画家も、風薫る5月に旅立った。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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自殺の季節。女子アナも、ヴィジュアル系アーティストも、異色の漫画家も、風薫る5月に旅立った。

昭和から平成へと移りゆく「時代」の風景が見えてくる「平成の死」を振り返る。

■平成を代表するヴィジュアル系バンドのギタリストが…

 平成19年、現職の農水大臣でありながら、62歳で自殺したのが松岡利勝である。謎の水道光熱費問題という不祥事で追及を受け「ナントカ還元水が」などと信憑性のない言い訳をして叩かれたあげく、5月28日に議員宿舎で首を吊った。その前日、元秘書への電話でこうつぶやいたという。

「きつい。たいがいにきつい。中川先生もきつかっただろうな……」

 昭和58年に自殺した中川一郎元農水相(享年57)に思いを馳せながらの死だった。

 平成10年の5月2日未明に、33歳で亡くなったのはhideだ。自宅の自室のドアノブに、縦に裂いてヒモ状にしたタオルを巻き、それで首を吊るような姿勢で見つかり、すでに意識はなかった。その数時間前に放送されたラジオ(生放送ではない)では「薄っぺらい人生でした」「来週は、あるのかないのかわかりませんが、放送事故にはならないように注意したい」などと話していた。

 遺書はなかったが、警察は自殺と断定。しかし、所属事務所は「呼吸困難による死去」と発表した。ただ、この時期、彼が大きな喪失感と無力感にさいなまれていたことは間違いない。前年9月、X JAPANが解散。彼はこのバンドのギタリストであるだけでなく、ビジュアル面での展開を任されていた。「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」というコピーを考案し、ここから彼らは「ヴィジュアル系」の元祖となる。彼はこのバンドについて「俺は命懸けでサポートする」とまで言っていたのだ。

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『平成の死: 追悼は生きる糧』

 

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鈴木涼美さん(作家・社会学者)推薦!

世界で唯一の「死で読み解く平成史」であり、
「平成に亡くなった著名人への追悼を生きる糧にした奇書」である。

 

「この本を手にとったあなたは、人一倍、死に関心があるはずだ。そんな本を作った自分は、なおさらである。ではなぜ、死に関心があるかといえば、自分の場合はまず、死によって見えてくるものがあるということが大きい。たとえば、人は誰かの死によって時代を感じる。有名人であれ、身近な人であれ、その死から世の中や自分自身のうつろいを見てとるわけだ。
これが誰かの誕生だとそうもいかない。人が知ることができる誕生はせいぜい、皇族のような超有名人やごく身近な人の子供に限られるからだ。また、そういう人たちがこれから何をなすかもわからない。それよりは、すでに何かをなした人の死のほうが、より多くの時代の風景を見せてくれるのである。
したがって、平成という時代を見たいなら、その時代の死を見つめればいい、と考えた。大活躍した有名人だったり、大騒ぎになった事件だったり。その死を振り返ることで、平成という時代が何だったのか、その本質が浮き彫りにできるはずなのだ。
そして、もうひとつ、死そのものを知りたいというのもある。死が怖かったり、逆に憧れたりするのも、死がよくわからないからでもあるだろう。ただ、人は自分の死を認識することはできず、誰かの死から想像するしかない。それが死を学ぶということだ。
さらにいえば、誰かの死を思うことは自分の生き方をも変える。その人の分まで生きようと決意したり、自分も早く逝きたくなってしまったり、その病気や災害の実態に接して予防策を考えたり。いずれにせよ、死を意識することで、覚悟や準備ができる。死は生のゴールでもあるから、自分が本当はどう生きたいのかという発見にもつながるだろう。それはかけがえのない「糧」ともなるにちがいない。
また、死を思うことで死者との「再会」もできる。在りし日が懐かしく甦ったり、新たな魅力を発見したり。死は終わりではなく、思うことで死者も生き続ける。この本は、そんな愉しさにもあふれているはずだ。それをぜひ、ともに味わってほしい。
死とは何か、平成とは何だったのか。そして、自分とは――。それを探るための旅が、ここから始まる。」(「はじめに」より抜粋)

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  • 宝泉 薫
  • 2019.04.28