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【5歳児向けの共通教育プログラム】現代の学校教育は子どもと教員を幸せにできるのか

第86回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

教育


子どもたちはテストによる競争にさらされ、教職員はやりがいや使命感を奪われている。これこそが教育現場の大きな問題だ。よりよい教育、学校づくりには現場からの提言がますます重要になってくるのではないだろうか。


■現場からの警鐘はすでに鳴っている

 松井一郎・大阪市長に「教育行政での提言書」を直接送ったことで注目されたのが、大阪市立木川南小学校の久保敬校長だった。提言書には、「学校は、グローバル経済を支える人材という『商品』を作り出す工場と化している」と書いた。

 そして、「そこでは、子どもたちはテストの点によって選別される『競争』に晒される。そして、教職員は子どもの成長に関わる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のためかわからないような仕事に追われ、疲弊していく。さらには、やりがいや使命感を奪われ、働くことへの意欲さえ失いつつある」と続けている。

 学校が子どもたちを人間として成長させるのではなく「商品」に作り上げる場となっており、教職員は商品生産における労働者となってしまっているとの指摘である。まるで、『女工哀史』(細井和喜蔵)の世界のようだ。

 大機械制工場での紡績業・織布業で大量に安価に生産される綿糸や絹糸は国際競争を勝ち抜き、近代日本の発展を担う存在だった。しかし、その影には過酷な環境で長時間労働を強いられる女性労働者の存在があった。
 それと同じで現在の学校は、国際競争力を勝ち抜いてける「人材という商品」を生産するために、教職員という労働者は過酷な環境での長時間労働を強いられている。かつての女性労働者と同じで、疲弊し、健康を害する者も増えている。

 そこで生み出された「商品」が未来永劫に価値を持ち続けられるのなら救いがあるのかもしれないが、かつての紡績業・織布業が急速に衰退していったように、価値を失う可能性は低くない。また、それ以前に、よりよい「商品」となるための競争などに晒されて、精神的にも肉体的にも、子どもたちは健康を害する危険にさらされている。
 学校の工場化は、子どもたちにも教職員にも幸せをもたらさない。そして久保校長は、「今、価値の転換を図らなければ、教育の世界に未来はないのではないかとの思いが胸をよぎる」と嘆く。

 久保校長の提言書は、学校の工場化を加速しつつある松井市長と大阪市への苦言であり、警鐘でもある。しかし、これは大阪市だけの問題ではない。日本全国で、大なり小なり進行している。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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