自殺の季節。女子アナも、ヴィジュアル系アーティストも、異色の漫画家も、風薫る5月に旅立った。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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自殺の季節。女子アナも、ヴィジュアル系アーティストも、異色の漫画家も、風薫る5月に旅立った。

昭和から平成へと移りゆく「時代」の風景が見えてくる「平成の死」を振り返る。

■儚く可憐な女性タレントたち

 平成9年の5月9日に32歳で亡くなった可愛かずみも、似たタイプだった。しかも、川田がアイドルアナから報道キャスターになりたくてもがいていたように、可愛もヌードのイメージを脱却し、女優で評価されようとして必死だった。

 にっかつロマンポルノの『セーラー服色情飼育』でデビューしたあと『オレたちひょうきん族』のひょうきんベストテンで中森明菜役を演じるなどして人気の出た彼女は、ドラマ『季節はずれの海岸物語』などで女優としてもそこそこの実績をあげた。私生活では、プロ野球・ヤクルトのエースだった川崎憲次郎との熱愛を報じられたが、破局。しかし、死の2ヶ月後には実業家と結婚する予定だった。にもかかわらず、川崎の住むマンションに行き、身を投げたのである 

 婚約者は「いったい何が良くて、何が悪かったのか」と頭を抱えたが、友人の川上麻衣子は「結婚することへの悩み」を指摘して「新しい人生を歩むということへの不安もあったでしょうし」と語った。死への親和性が高い人には、結婚というおめでたい節目も負の契機になりかねないということだろう。

 平成23年には、上原美優が24歳で帰らぬ人に。グラビアや大家族をネタにしたトークで人気を博したが、5月12日の未明、自宅マンションで首を吊った。一緒にいた恋人に席をはずすよう頼み、そのあいだに決行したという。

 ただ、この恋人との関係は微妙で「合鍵まで持っている仲だったのに、カレは救急車に乗りませんでした」(彼女の知人)という証言も。また「貧乏アイドル」として「草を食べていました」などと発言して売れたわりに、メンタルは脆かったようだ。自伝によれば、ハタチのときにも失恋直後に睡眠薬自殺を図ったという。前年3月には、母が心筋梗塞で急死。10人きょうだいの末っ子だった彼女は母が大好きで、かけがえのない相談相手でもあった。

 それ以来、仕事でもミスが目立つようになり、タバコの量も増えるなどした。そんななか、東日本大震災が起き、それにもショックを受ける。自殺前日には父との電話で、

「お母さんのところへ行きたい。種子島に帰りたい」

 と、訴えてもいた。

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『平成の死: 追悼は生きる糧』

 

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鈴木涼美さん(作家・社会学者)推薦!

世界で唯一の「死で読み解く平成史」であり、
「平成に亡くなった著名人への追悼を生きる糧にした奇書」である。

 

「この本を手にとったあなたは、人一倍、死に関心があるはずだ。そんな本を作った自分は、なおさらである。ではなぜ、死に関心があるかといえば、自分の場合はまず、死によって見えてくるものがあるということが大きい。たとえば、人は誰かの死によって時代を感じる。有名人であれ、身近な人であれ、その死から世の中や自分自身のうつろいを見てとるわけだ。
これが誰かの誕生だとそうもいかない。人が知ることができる誕生はせいぜい、皇族のような超有名人やごく身近な人の子供に限られるからだ。また、そういう人たちがこれから何をなすかもわからない。それよりは、すでに何かをなした人の死のほうが、より多くの時代の風景を見せてくれるのである。
したがって、平成という時代を見たいなら、その時代の死を見つめればいい、と考えた。大活躍した有名人だったり、大騒ぎになった事件だったり。その死を振り返ることで、平成という時代が何だったのか、その本質が浮き彫りにできるはずなのだ。
そして、もうひとつ、死そのものを知りたいというのもある。死が怖かったり、逆に憧れたりするのも、死がよくわからないからでもあるだろう。ただ、人は自分の死を認識することはできず、誰かの死から想像するしかない。それが死を学ぶということだ。
さらにいえば、誰かの死を思うことは自分の生き方をも変える。その人の分まで生きようと決意したり、自分も早く逝きたくなってしまったり、その病気や災害の実態に接して予防策を考えたり。いずれにせよ、死を意識することで、覚悟や準備ができる。死は生のゴールでもあるから、自分が本当はどう生きたいのかという発見にもつながるだろう。それはかけがえのない「糧」ともなるにちがいない。
また、死を思うことで死者との「再会」もできる。在りし日が懐かしく甦ったり、新たな魅力を発見したり。死は終わりではなく、思うことで死者も生き続ける。この本は、そんな愉しさにもあふれているはずだ。それをぜひ、ともに味わってほしい。
死とは何か、平成とは何だったのか。そして、自分とは――。それを探るための旅が、ここから始まる。」(「はじめに」より抜粋)

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  • 宝泉 薫
  • 2019.04.28