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美空ひばり、手塚治虫、松田優作、竹下登の金庫番……。平成元年を象徴した6人の最期

昭和から平成へと移りゆく「時代」の風景が見えてくる「平成の死」を振り返る。

■どの死からも昭和から平成へと移りゆく「時代」の風景が見えてくる

 さて、平成が始まったときの首相は竹下登である。目玉政策として消費税を導入し、4月1日にスタートさせたが、リクルート事件でその金権体質を追及されていた。25日には、退陣する意向を表明。その翌日「金庫番」と呼ばれた秘書・青木伊平が自宅で首吊り自殺を遂げる。

「仕える先生に迷惑がかからないようにすることが第一の務めだ」「立場上知り得たことを簡単に口にしてしまうのは、人間のクズだ」

 という信条を貫き「私一人でやったこと」だとして、58歳で自らの命を絶ったのである。これは事件の際にありがちな、死んで責任をとるという「現代の切腹」が平成にも受け継がれたことを示す死でもあった。

 また、11月4日にはオウム真理教の問題を追及していた弁護士の坂本堤が妻子とともに殺害された。

 ただ、これは当初「失踪」事件として捜査され、オウムの犯行とは断定されなかった。唯一の物証は現場に落ちていた教団バッジのプルシャだが、見つけたのが警察署員ではなく坂本弁護士の母だったため、教祖の麻原彰晃は「その行動には疑問がある」と反論。警察も「オウムを犯人に仕立てるために仕組まれたのでは」と疑い、捜査は難航してしまう。

 そんななか、オウムは「怪」進撃を続けていった。選挙やテレビのバラエティ番組に出て、怪しいけど面白そうな集団というイメージをふりまき、7年後の地下鉄サリン事件で日本中を震撼させるのである。

 以上、どの死からも昭和から平成へと移りゆく「時代」の風景が見えてくる。令和元年にも、そんな象徴的な最期を目にすることになるだろう。

KEYWORDS:

『平成の死: 追悼は生きる糧』

 

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鈴木涼美さん(作家・社会学者)推薦!

世界で唯一の「死で読み解く平成史」であり、
「平成に亡くなった著名人への追悼を生きる糧にした奇書」である。

 

「この本を手にとったあなたは、人一倍、死に関心があるはずだ。そんな本を作った自分は、なおさらである。ではなぜ、死に関心があるかといえば、自分の場合はまず、死によって見えてくるものがあるということが大きい。たとえば、人は誰かの死によって時代を感じる。有名人であれ、身近な人であれ、その死から世の中や自分自身のうつろいを見てとるわけだ。
これが誰かの誕生だとそうもいかない。人が知ることができる誕生はせいぜい、皇族のような超有名人やごく身近な人の子供に限られるからだ。また、そういう人たちがこれから何をなすかもわからない。それよりは、すでに何かをなした人の死のほうが、より多くの時代の風景を見せてくれるのである。
したがって、平成という時代を見たいなら、その時代の死を見つめればいい、と考えた。大活躍した有名人だったり、大騒ぎになった事件だったり。その死を振り返ることで、平成という時代が何だったのか、その本質が浮き彫りにできるはずなのだ。
そして、もうひとつ、死そのものを知りたいというのもある。死が怖かったり、逆に憧れたりするのも、死がよくわからないからでもあるだろう。ただ、人は自分の死を認識することはできず、誰かの死から想像するしかない。それが死を学ぶということだ。
さらにいえば、誰かの死を思うことは自分の生き方をも変える。その人の分まで生きようと決意したり、自分も早く逝きたくなってしまったり、その病気や災害の実態に接して予防策を考えたり。いずれにせよ、死を意識することで、覚悟や準備ができる。死は生のゴールでもあるから、自分が本当はどう生きたいのかという発見にもつながるだろう。それはかけがえのない「糧」ともなるにちがいない。
また、死を思うことで死者との「再会」もできる。在りし日が懐かしく甦ったり、新たな魅力を発見したり。死は終わりではなく、思うことで死者も生き続ける。この本は、そんな愉しさにもあふれているはずだ。それをぜひ、ともに味わってほしい。
死とは何か、平成とは何だったのか。そして、自分とは――。それを探るための旅が、ここから始まる。」(「はじめに」より抜粋)

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  • 宝泉 薫
  • 2019.04.28