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中国では最悪の日、日本では女の日だった端午の節句
――5月の行事を学び直す

■「季節行事」の意味と由来を知る・5月編

■中国では最悪の日だった5月5日

 

写真を拡大 中国では旧暦の5月5日は害虫害獣がうごめきだす時期だと思われていた。

 5月5日が端午の節句だということは多くの方がご存じだろうが、なぜ端午というのかご承知だろうか。

 まず「午」は「五」のことだ。日本語同様、中国語でも発音が同じなので「五」の意味で用いられる。いっぽう「端」は「最初」ということ。つまり、「端午」は「最初の五のつく日」すなわち「五日」という意味になる。「五日」ということなら、年に12回あるわけだが、5月は月も「午(五)」なので、午が重なる「重午節」である。ここから端午といえば5月5日の意味となった。

 五が重なるということなら「5」は陽数(奇数)なのだから縁起のいい日になりそうなものだが、残念なことに季節がよくない。現在は太陽暦で端午の節句を行うので、すがすがしい季節に思えるが、陰暦を使っていた頃は梅雨のまっ最中。じめじめと暑い頃なので、病気も虫も蔓延しやすいことから悪日とされた。

 とくにこの時期に出てくるムカデ・サソリ(中国の話だ)・ヒキガエル・ヘビ・ヤモリを五毒と呼んだ。この五毒を避けるために、香りで魔障を払う菖蒲(しょうぶ)・ヨモギ・ザクロの花・ニンニク・ヒメユリの五瑞が家の前や部屋の隅などに置かれた。とくに菖蒲は香りが強く葉が剣の形をしているので珍重された。日本の菖蒲湯はこの習俗に由来している。

 五瑞だけでは心配なので門扉には鍾馗(しょうき)や張天師(ちょうてんし)という道教の祖師の絵像が貼られた。

 鍾馗は唐の玄宗皇帝に取り憑いた病魔を退治したという神霊で、もとは宮中で自殺した科挙の落第生であったが、高祖が篤く祀ってくれたお礼に邪鬼を退治しているのだという。

 なお、端午の節句に粽(ちまき)を食べるのは、屈原(中国戦国時代の政治家)の鎮魂に由来すると伝わる。かつては屈原の霊を慰めるために入水した川に米を投げ入れていたのだが、屈原の霊が米のままだと龍に食べられてしまうから蓮の葉などに包んでほしいと言ったのが始まりとされる。

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渋谷 申博

しぶや のぶひろ

日本宗教史研究家

1960年東京都生まれ。早稲田大学卒業。
神道・仏教など日本の宗教史に関わる執筆活動をするかたわら、全国の社寺・聖地・聖地鉄道などのフィールドワークを続けている。
著書は『聖地鉄道めぐり』、『秘境神社めぐり』、『歴史さんぽ 東京の神社・お寺めぐり』、『一生に一度は参拝したい全国の神社』、『全国 天皇家ゆかりの神社・お寺めぐり』(G.B.)、『神社に秘められた日本書紀の謎』(宝島社)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』(日本文芸社)ほか多数。

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