|#03 『花が教えた殺しの犯人』

 
時には花が死者からのメッセージだったりもする。

 花をめぐる怪異譚は都市伝説にもある。

 とある郊外の住宅地に若夫婦が住んでいた。
 夫は都心の会社に勤めるサラリーマン、妻は庭いじりが好きな専業主婦であった。
 彼女が毎日のように手入れをするので彼らの家は季節ごとの花で飾られており、道行く人が足を止めて眺めるほどであった。また、妻が庭先で近所の人と立ち話をする姿もよく見られた。
 仲睦まじい夫婦と思われていた2人であったが、すでに愛情は冷めケンカが絶えなかった。腹を立てた妻が家を出て数日帰らないということも一度ならずあった。

 そして、その冬、妻は家から姿を消した。

 春になっても妻は家に戻らず、自慢の庭も荒れ放題になっていった。
 そんなある日、数人の男が彼らの家を訪れた。男の一人は夫に1通の書類を示して言った。

「殺人の疑いで家宅捜索令状が出ています。今からこの家の捜査を行います」

 夫はあわてて男たちを押しとどめようとした。

「何を言ってるんですか、殺人だなんて。まったく身に覚えがありませんよ。オレが誰を殺したというんですか?」

 すると男――刑事はにやりと笑って言った。

「最近、奥さんの姿が見えないそうじゃないですか。どこに行ったんです?」

「オレに愛想を尽かして家を出ていって、それっきりです。今どこにいるかなんて知りませんよ」

「違うね」刑事ははっきりと断言した。「あんたは奥さんを殺して庭に埋めたんだろ?」

「何を証拠にそんなことを・・・」

「証拠はあるさ、そこにな」

 刑事がそう言って庭の一角を指さすと、夫は驚愕のあまり口もきけなくなった。
 そこには妻が一番好きだと言っていたサクラソウが、人の形に生えそろって満開になっていたのだ。

 サクラソウは妻の屍体を栄養として育っていたのだった。

 

 都市伝説には、アジサイの花の色が変わっていたので根元に屍体が埋められているのがわかった、という話もある。

 やはり花は人の命を吸って咲くものなのだろうか・・・