■『俺に似たひと』

 もう一冊、介護本を紹介したい。こちらはマンガではない。平川克美『俺に似たひと』だ。

 母親の死により、実家で父親とふたり暮らしをすることになった「俺」。やがて父親が要介護4の状態になり、若い頃は相容れないと思っていた父を介護する中で、自分は父親に似ていることに気付く。

 息子が父親を看取るまでの1年半の介護ドキュメントとしても読めるが、この物語の本題はおそらくそこではない。親と反目していた息子が介護の日々を通して、父の人生や、父の生きてきた時代と向き合い、血縁や死や「俺」について見つめ直す、その過程が感情を抑えた筆致で描かれる。

 父親をお風呂に入れてあげる話から、引用しよう。この箇所は珍しく、筆者の感情がストレートにこぼれている。

<「さっぱりしただろ」「ああ、風呂はいいなぁ」

 この会話を何度繰り返しただろうか。そして、この会話がどれほどの幸福感をもたらすものかを実感する>

 当連載『母への詫び状』にも「独身息子が介護で見つけた小さな幸福」というサブタイトルが付いている。

 なんだ、ぼくが書こうとしてきたことなんて、とっくに先人が書いているではないか。個人的にもっとも胸に響いた介護本である。

※本連載は隔週木曜日「夕暮時」に更新します。本連載に関するご意見・ご要望は「besttimes■bestsellers.co.jp」までお送りください(■を@に変えてください)。連載第1~10回はnoteで公開中!