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児童虐待と「運命の人質」(前編)

〈平貧〉の時代(13)

■政府の虐待対策は適切か

 1月24日、千葉県野田市の小学生・栗原心愛(みあ)さんの死をきっかけに、わが国では目下、児童虐待が大きな関心を呼んでいます。

 児童相談所や教育委員会の対応が不適切だったこともあって、2月8日には政府が関係閣僚会議を開くにいたりました。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190208-OYT1T50161/

 安倍総理は会議の席で「幼い命を守れなかったことは悔やんでも悔やみきれない。子どもの命を守ることを最優先にあらゆる手段を尽くす」と発言。

 こうして、以下の対策が打ち出されます。

・児童相談所が在宅で指導しているすべての虐待事案に関し、1ヶ月以内に子どもの安全を確認する。

・全国の公立小中学校と教育委員会は、虐待が疑われる事案について、やはり1か月かけて点検する。保護者が虐待を認めなかったり、転居を繰り返して関係機関との関わりを避けたりするときは、ためらうことなく一時保護や立ち入り調査を行う。

 さらに虐待(の疑い)をめぐる通報や、虐待関連の資料については「通告元は一切明かさない、資料は一切見せない」というルールをつくるとのこと。

 保護者が資料開示などを威圧的に要求する場合には、学校や教委が児相や警察と連携して対処することもルール化するそうです。

 10歳の少女が、両親から虐待を受けた果てに死んでしまうというのは、何とも痛ましい話。

 しかも、わが国での児童虐待件数(正確には、全国児童相談所における虐待相談件数)は、2012年度から2017年度にいたる5年間で倍増しています。

 厚生労働省によれば、統計を取り始めた1990年度から27年連続で増加しているとか。

http://www.orangeribbon.jp/info/npo/2018/09/29-3.php

 安倍総理ならずとも、あらゆる手段を尽くして根絶する! と言いたくなるところでしょう。

 ただし、感情論で政策を決めていいかどうかは別の話。

 今回打ち出された対策は、重大な問題をはらんでいるとしか思えないのです。

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佐藤 健志

1966年東京都生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒。1989年、戯曲「ブロークン・ジャパニーズ」で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞。

主著に『右の売国、左の亡国』『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』『僕たちは戦後史を知らない』『夢見られた近代』『バラバラ殺人の文明論』『震災ゴジラ! 』『本格保守宣言』『チングー・韓国の友人』など。

共著に『国家のツジツマ』『対論「炎上」日本のメカニズム』、訳書に『〈新訳〉フランス革命の省察』、『コモン・センス完全版』がある。

ラジオのコメンテーターはじめ、各種メディアでも活躍。2009年~2011年の「Soundtrax INTERZONE」(インターFM)では、構成・選曲・DJの三役を務めた。


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