■「イケメン」か「ブサメン」か…品定めされる男たち

 政治の社会にも新たな女性たちの種族が誕生する。在任中と現在とで評価が百八十度変わった首相経験者と言えば小泉純一郎。彼が彼の提唱する形での郵政民営化に反対する自党候補を落選させるべく集められたのが「剣客」なる人々。この剣客たちは無事当選すると「小泉チルドレン」に進化した。数年後には野党であった民主党が同じ手法を用いる。政権交代を旗印に集められた「刺客」たちは「小沢ガールズ」なる集団へと進化したのだった。

 平成15(2003)年、負け組ならぬ「負け犬」が話題となった。発祥はエッセイスト酒井順子氏のベストセラー『負け犬の遠吠え』。30代、未婚、未出産の主にキャリアウーマンを自虐的に皮肉った言葉だった。そうした女性の要望を支えるためでもなかろうが、のちに男性の側から、育児に積極的に参加する「イクメン」なる種族も生まれている。

 そのイクメンの元ネタが今やすっかり定着してしまった「イケメン」という新語。本来の意味はイケてるメンズ。この言葉が男女の関係に果たした役割はかなり大きい。 

 それまで、ルックスが秀でた男性を表する言葉には、ハンサムだの二枚目だのといった使うことが恥ずかしくなるような古さを感じさせるものしかなかった。そこへ「イケメン」の登場である。源氏物語の「雨夜の品定め」以降、異性の品評会は(少なくとも表向きは)男性の専売特許のようなものであったが、「イケメン」の普及以降、一部で「ブサメン」なる言葉も登場し、女性による男のルックスの品定めが堂々と行われるようになる。

 平成18(2006)年には甲子園で活躍した斎藤佑樹投手のニックネーム「ハンカチ王子」から「○○王子」という呼称が一般化、翌平成19(2007)年にゴルフ界に颯爽と現れた「ハニカミ王子」こと石川遼選手の影響もあり、この国に、無数の王子が誕生し女性たちの嬌声を集めた。

 弱くなる一方の男たちが「草食男子」化し「ツンデレ」女性に萌え=などと呆けてるうちに、女性たちはさらに「女子」なる人種に変貌を遂げる。「歴女」や「森ガール」など、かつての意味での女子に該当する者もいたが、それ以上の年齢層でも、オバサンは「熟女」や「美魔女」と化し、四十代はおしゃれな「アラフォー」となった。いまも街はセレブを気取る美しい女性たちで溢れ返っている。