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義務教育の「義務」とは何への義務か(後編)

移民にこそ義務教育を!

■すでに1.6万人が就学不明

 毎日新聞は1月6日、「外国籍の子 就学不明1.6万人 義務教育の対象
」という記事を配信しました。

 同紙は2018年の9〜11月、義務教育を受ける年齢の外国籍の子どもが多い市区町(上位100ヶ所)を対象としてアンケート調査を行ったのですが、当該の子ども約7万7500人のうち、20%以上にあたる約1万6000人が、学校に通っているかどうか確認できない「就学不明」状態にあったのです!

 わが国の市区町の数は1558。

 そのうちの上位100ヶ所でこの数字ですから、就学不明の外国籍児童数も、本当は2万人ぐらいいるかも知れません。

 ついでにここで挙げられた児童の数は、2018年5月の時点で各自治体に住民登録されているもの。

 登録されていなければ、そもそもカウントされませんから、実数はさらに増
える可能性があります。

 とはいえ、それらの点は脇に置きましょう。

 就学不明と認定された1万6000人は、具体的にどのような状態にあると想定されるのか?

 記事によると、
・家にはいるが就学していない
・所在不明になっている
・住民票を残したまま帰国・転居した
・私立学校、または外国人学校に通っているが、自治体が把握していない
 と見られるとのこと。

 子どもが所在不明なら、親も所在不明の恐れが強い。

 住民票を残したままの帰国・転居にしても、足取りがつかめない点は同じ。

 この調査結果、就学年齢の子どもを抱えて足取りのつかめない外国人が、数
万人規模で存在している可能性があることも示しているのです。

 今後、数字が増えてゆくのは疑いえないところですが、あわせて注目したい
点がある。

 つまり、自治体によって就学状況の把握のレベルが全然違うこと。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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