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「砂漠のキツネ」ロンメルも愛用した軽ハーフトラックSd.Kfz.250

電撃戦を支えたハーフトラックSd.kfz.251③

■多数の派生型

●Sd.Kfz. 250/1
基本となる軽偵察ハーフトラック。乗員2名、兵員4名が乗車可能で固有武装として機関銃1挺を備える他、車体後部にもう1挺を装備するための車載マウントが用意されている。
●Sd.Kfz. 250/3
充実した通信設備を搭載した無線指揮装甲車。地上部隊の指揮に利用できるだけでなく、空軍機との交信も可能だった。搭載している無線機の種類の違いにより、いくつかのバリエーションが存在する。本車で特に有名なのは、北アフリカ戦線で連合軍から「砂漠のキツネ」と呼ばれて畏怖されたエルヴィン・ロンメル将軍が愛用した2両であろう。1両には“Greif(ドイツ語で架空の猛獣グリフォンのこと)”、もう1両には“Adler(ドイツ語で鷲のこと)”という愛称が、それぞれ車体側面に大書きされていた。
●Sd.Kfz. 250/5とSd.Kfz. 250/12
砲兵部隊で使用する着弾観測車。突撃砲部隊でも使われたが、装甲が薄いため、のちには突撃砲自身が本車の任務を代替した。
●Sd.Kfz. 250/7
8cm迫撃砲を搭載した自走迫撃砲。
●Sd.Kfz. 250/8
IV号戦車初期型に搭載されていた24口径7.5cm砲を搭載した火力支援車。
●Sd.Kfz. 250/9
2cm機関砲搭載の軽偵察車。
●Sd.Kfz. 250/10
3.7cm対戦車砲搭載の戦車駆逐車。

 なお、一部割愛した派生型も存在することをお断りしておく。

 Sd.Kfz. 250は約6600両が生産された。連合軍でも特にアメリカ軍は、民間人時代に自動車に深く接していた経験のある将兵が多かったため、鹵獲した本車やSd.Kfz. 251などのハーフトラックを「員数外のどこでも乗り捨てられる余剰車両」として再利用したケースも少なくなかった。ただしその場合、ドイツ軍と誤認されて味方から攻撃を受けないように車体の前後や両側面、さらにはボンネットの上にまで、標準サイズよりもはるかに巨大な白星の国籍マークが描かれた。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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