レバノンは「戦う価値のある国」だ。より良き未来へ向けて、声を上げる活動家たち |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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レバノンは「戦う価値のある国」だ。より良き未来へ向けて、声を上げる活動家たち

中東のモザイク国家、レバノンの今④

■暖かい笑顔を見せてくれた若者

 そして、こうした指導者に導かれ、街での抗議活動に参加する若者は、どのような意図で活動に参加しているのだろうか。ベイルート中心地で行われる、政府軍戦車まで登場するような抗議活動には、貧富や教養の差を超え、多くの若者が参加する。ベイルートの某大学で学ぶ、マズルーさんもその一人だ。

 自分の未来に不安や不満を持ち、それぞれの思いを叫ぶ為に抗議活動に参加する、今日のレバノンの若者。昨年末に大きく取り上げられた社会問題の一つに、医療サービスの破綻がある。瀕死の重病を追った3歳児が、両親が私費保険未加入で、十分な現金もクレジットカードも持っていなかった為、病院の待合室で死亡したというニュースは、多くの国民に怒りを与えた。この他にも、仕事を探す若者は、実際の数値は誰にも分からないというレバノンの失業率や、汚職にまみれた国内のビジネスを嘆く。

 しかしながら、こうして一通り若者が見るレバノンの問題を語ってくれたマズルーさんは、インタビューを終えた後、日本から来た客人に対し、暖かい笑顔を見せた。

「ネガティブな話ばかりしてしまい、すいません。せっかくレバノンに来たのだから、美味しいレバノン料理を沢山食べていって下さい。肉類や魚介類だけでなく、菜食主義者向けの野菜料理の種類も豊富です。いい記事が書けるよう、頑張って下さい」

 丁寧に挨拶をし、握手をして去っていく今日のレバノンの若者に、明るい未来の兆しが見えたような気がした。

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竹鼻 智

たけはな さとし

1975年東京都生まれ。明治大学経営学部卒、Nyenrode Business Universiteit(オランダ)経営学修士。2006年より英国ロンドンに在住。ITコンサルタントとジャーナリストのフリーランス二足の草鞋を履きながら活動し、「ラグビーマガジン」(ベースボールマガジン社)、「Number」(文藝春秋)、「週刊エコノミスト」(毎日新聞社)へのコラム執筆など、現地からの情報を日本へ向けて発信。BEST T!MESでは、イングランド代表HC、エディー・ジョーンズ氏の連載「プレッシャーの力」の構成を担当。


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