■大富豪への道は欲望との戦いだ

 私が、なぜ、毎月10万円ずつ30年間、預金をつづけてきたかというと、小さな企業を経営してきたからだ。小さい企業というのは苦境に追い込まれても、国は助けてくれない。銀行だって助けてくれない。

 

 いまでこそ、私がいえば、銀行は何百億でも貸してくれるが、預金をはじめたころは、だれも金を貸してくれなかった。となると、自力救済しかない。私は、自力救済のためにこの預金をはじめたのだ。

 30年間、一銭も引きださずにつづけてきた預金通帳を見せれば、会社がパンク寸前になっても、死ぬまでかかって払うから金を貸してほしい、といえば、どんな人でも金を貸してくれる。私は本気でそう思ったから、預金をつづけてきたのだし、いまでも本気でそう思っている。

 みなさんは、時間を金にかえる方法というと、短時間に成功する方法を考えるのではないだろうか。
 しかし、そんなうまい方法がそうザラにころがっているわけではない。

 毎月10万円を30年かかって預金していくと、元金は3600万円で利息が8800万円。元金よりも利息のほうがはるかに多い。金を銀行に預けておいて利息を利用して金儲けをすることは、どんなに頭の悪い奴にでもできる金儲けである。

 しかも、この方法は時間をかければかけるほど、利息が大きくなっていく。これだって、時間を利用した立派な金儲けであることにかわりはない。

 短時間に大きいことをやろうとあせるよりも、時間をかけて大きいことを成すべきである。

 毎月、10万円ずつ預金をつづけた30年間に、私は何度、この預金をおろして使いたいという誘惑にかられたか、わからない。

 しかし、そのたびに、オレは30年間続ける、と決めたのだ、だから、いま、おろしたら負けなのだ、この貯金をおろす日はオレが終わる日だ、と自分にいましめつづけてきた。

 いま、考えると、そうやって自分の欲望をおさえて、これと戦いつづけたことが、克己心の要請に非常に役立っていると思う。

 自分に勝つ、己れの欲望に勝つ。これほどむずかしいことはないが、それを30年間預金をつづけ、一度も引きださないことで、私は成し得たと思う。

 もちろん、自分の欲望との戦いは生きているかぎりつづくはずである。しかし、いまは、その戦いに、いつでも勝つ自信がある。それを植えつけたのがこの預金だった。

 これまで仕事をやってくる上で、苦しいことはずいぶんあった。いやなことも多かった。しかし、私は、自分の尻を引っぱたいて自分を前進させてきた。いったんこうと決めたら、絶対にやるんだ、と自分にムチをうってやってきた。

 それはある意味では、この預金があったからできたのではないか、と思う。
 この預金は、私が死んだら息子に引きつがせ、30年つづけさせようと思う。そして、息子から孫にバトンタッチをし、さらに30年やらせようと思っている。90年たったら、毎月10万円の預金の元利合計はいくらになるか、想像もつかない。
 そこでなにをやるか。私はギネスブックに売りこもうと思っている。
 90年間、子孫三代にわたる克己心養成の証をギネスブックに登録するのである。そう考えると愉快になる。

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