■後続の歩兵が「生身」であれば…戦車では足りない点

写真を拡大 アドルフ・ケグレスがニコライ2世のために市販車をベースにカスタム・メイドで造り上げたハーフトラック。雪中での走行を考慮して前輪にはスキーが併用されている。

 防御堅固な塹壕線に機関銃を据えて、突撃してくる敵の歩兵を薙ぎ倒す。後方からは野砲の榴弾をばかすか見舞う。これでは突撃する攻撃側は犠牲ばかりが大きくなり、しかも敵の塹壕線を奪取することはかなわない。第一次大戦時の塹壕戦の悲惨な実相である。

 そこで、このような事態を打開すべく、敵の機関銃弾をものともせずに突進し、自ら搭載した砲と機関銃で塹壕線にこもる敵の歩兵を掃討。後続の味方歩兵部隊の前進を支援するために開発されたのが戦車だった。

 ところが、ここで問題が生じた。確かに戦車は敵の機銃弾や砲弾の破片などものともせずに戦えるが、いくらその戦車が突破口を穿ってくれたとはいえ、後続の歩兵が「生身」であれば、生き残った敵の機関銃や砲撃でたやすくやられてしまうではないか。しかも味方の歩兵が占領しない限り、塹壕線を奪取したことにはならないのだ。

 

 結局、この問題は第一次大戦中には解決されなかった。しかし同大戦中に、その解決策の萌芽はあった。装輪式車両では、装軌式車両の戦車に追従することはできない。つまり、トラックに歩兵を乗せて運ぶのでは、戦車が進む不整地を追随走破するのが難しい。では、砲塔をなくし装甲も薄くした兵員輸送用の装軌式車両はどうか? 実に適切な選択肢だが、いかんせんコストが高すぎて数を揃えるのが困難だ。

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