前田裕二×藤田田、新旧起業家の共通点は「圧倒的メモ魔」
SHOWROOM社長と日本マクドナルド創業者。そのメモ術がすさまじい。
■「水戸は親藩」というメモがあれば…
わたしが「売れる」と主張した根拠は、水戸がかつての徳川ご三家の一つ、つまり「親藩」だったというところにあった。
ところが、大名が統治した藩、とくに外様大名の藩に行くと、鍋島藩は久留米絣、阿波徳島藩は藍の染料といったように、それぞれ特産品の生産を奨励して「いざ!」というときに備えている。百万石の加賀藩も、薩摩藩も外様大名だから、いつ幕府に攻められるかわからないと口ではいわないが考えていたのだろう、勤倹節約の風はきわめて強い。
つまり、わたしが調べたところでは、その地方が「天領」であるか「親藩」であるか「外様」であるかによって、それぞれの“国民性”というか“領民性”は違っていたのである。それから400年後の現在でも、大名の統治下にあった地方の人はよく働くし、サラリーマンとしては非常に忠誠心が高い。天領だったところの人はあまり忠誠心がないといったような“県民性”の違いとして顕著にあらわれているのだ。こうした“県民性”を知っていれば、商売上とても役に立つし、日常の話題を豊富にすることにもなる。
ようするに、政治、経済、歴史、スポーツ、レジャーなど、あらゆる分野にわたって好奇心をぶつけ、雑学に強くなっていけば、話題を豊富にし人脈も広がり、人生を豊かにすることはもちろん、的確な判断を下すためにも大いに役立つのである。そしてその雑学に支えられた広い視野が、正確な判断を生み出すのである。
ところが日本人はとかく「商人はソロバン勘定ができればいい」と考えがちで、大企業のトップでも時間のムダというのだろう、雑学には興味をしめさない人たちが多いが、それはとんでもない錯覚である。その「ソロバン勘定」をする視野が狭いか広いかによって、しばしば企業の明暗を決めることがあるのだ。
現代は、なにをするにも専門以外にじつにさまざまな知識を持っていなければならない時代だ。雑学の知識に乏しく、物事を一つの角度からしか眺められない人間は、人間としても失格だが、ビジネスマンとしても失格なのである。
(『勝てば官軍』より構成)