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桜のせいで弘前城が見えない!?

外川淳の「城の搦め手」第83回

■弘前城の桜は邪魔?

 弘前城を訪ねるとき、桜の時期を避けた方が無難ともいえる。城をじっくりと見るには、観光客は少ない方がよいからだ。

下乗橋より天守を望む
春の季節には、桜と天守のコラボを楽しむベストアングル。中央に写り込むのは電動アシスト折り畳み式の愛車。 このときの取材は、川崎の自宅から自家用車で出撃。広い城内を自転車で巡る。

 明治15年、荒廃しつつあった弘前城内には1000本のソメイヨシノが植樹された。はじめは、神聖な城内を舞台とする花見への反発も強く、若木の段階で折られたり、引き抜かれたりした桜も多かった。だが、明治30年代になり、さらに1000本の桜が追加されて以降、弘前城は桜の名所として定着して今日に至る。本来、弘前城の最大の見所は、天守や櫓や門などであるのはいうまでもない。にもかかわらず、桜の方が集客力を見込まれているのか、野放しに枝を広げて、天守を覆い尽くす勢いにある。そのため、天守を東側から撮影するポイントは皆無に等しく、現状では、桜と城との主客逆転にある。

 

桜の枝に隠される天守
濠際まで斜面を泥まみれになりながら下る。通常では考えられないアングルから、あおって撮影しても、桜の枝に邪魔される。桜の季節であれば、ベストショットだったに違いない。

 ここは、弘前城という「城」であるからには、城の主役である天守の威風堂々とした姿が見えるように、もっと桜の剪定作業をすべきだと思う。なお、崩落の危険のある石垣を解体修理する必要が生じ、天守を本丸の内側へ70メートル移動する工事が開始される。

 そのため、平成26年の弘前さくらまつりが終了してから、石垣の修理が完了するまでの10年前後、写真のような天守と桜とのコラボは、楽しむことができない。
 ただし、現在、姫路城の天守が修復工事の様子を公開しているように、行政は、天守の移設や石垣の解体工事を見学できる態勢を整え、観光客の減少に対処しようとしている。

東門周辺の土塁
法面(斜面)の急角度が維持され、保存状態は良好。

 写真のような土塁を見ると、上りたくなるものの、たしか、侵入禁止だったことから、史跡保護の観点から素直に従った。

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外川 淳

とがわ じゅん

1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学日本史学科卒。歴史雑誌の編集者を経て、現在、歴史アナリスト。



戦国時代から幕末維新まで、軍事史を得意分野とする。



著書『秀吉 戦国城盗り物語』『しぶとい戦国武将伝』『完全制覇 戦国合戦史』『早分かり戦国史』など。



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