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法隆寺にある七つの不思議な伝説

聖徳太子の死にまつわる謎⑳

■聖徳太子暗殺の陰に潜む黒幕があぶり出されるか?

写真を拡大 上宮王家『日本歴史図会. 第1輯』古谷知新 編(国民図書刊)

『日本書紀』は朝廷の聖者・聖徳太子の実像を曖味にすることによって、暗殺説を密かに退けている。 このような朝廷の態度の理由のひとつとして考えられるのは、もしかすると朝廷と蘇我氏がグルになって聖徳太子を暗殺したのではないか、ということである。

 つまり、『日本書紀』の太子にまつわる多くの謎が、聖徳太子暗殺の悲劇を抹殺するために生まれたものであるとしたら、それを可能にするのは、組織的かつ長い時間をかけて練り上げられた計画的犯行であること以外に考えられない。 

 もし朝廷が蘇我氏の後ろ楯となって聖徳太子暗殺に暗躍していたのならば、朝廷が 『日本書紀』のなかで聖徳太子暗殺を隠蔽したとしても不思議ではなく、だからこそ『日本書紀』はこの事実を抹殺するために、逆に聖徳太子を史上まれにみる聖者として描かざるをえなかったということになるからだ。筆者はここに朝廷の仕掛けた遠大な陰謀を感じずにはいられない。

 そして、この壮大なトリックを完成させることは、乙巳の変で滅亡した蘇我氏だけでは完成させることはできなかったはずだ。なぜなら、『日本書紀』編纂の最後までかかわらないかぎり、この遠大な作業を持続させるのは不可能だからである。すなわち朝廷という永続的な同一権力があってこそはじめて成立しうる「完全犯罪」なのだ。 

 朝廷の仕掛けた完全犯罪のシナリオ。それはいかなるものだったのか。 
そのシナリオに対してひとつの答えを出したのが、梅原猛氏である。 梅原氏は、聖徳太子の実像と朝廷の行った犯罪のすべては、法隆寺に残された多くの謎のなかに隠されているといい、この寺の不思議なあり方に言及している。 
まず「かつて法隆寺には七不思議の伝説があった」と次のような伝承を引用している。 

①法隆寺には蜘蛛が巣をかけない
②南大門の前に鯛石と呼ばれる大きな石がある
③五重塔の上に謙が刺さっている
④不思議な伏蔵がある
⑤法隆寺の蛙には片目がない
⑥夢殿の礼盤(お坊さんがすわる台)の下が汗をかいている
⑦雨だれが穴をあけるべき地面に穴がない。  

 これらの法隆寺の奇怪な伝承を、「何だかうす気味の悪い話である。そのうす気味の悪い伝説の背後にあるのは、いったい何だろうか」 としたうえで、もっと現実的な謎が法隆寺にはあふれているとしている。 たとえば、「中門」の謎である。

(次回につづく)

〈『聖徳太子は誰に殺された?』〉より

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関 裕二

せき ゆうじ

 



1959年生まれ。歴史作家。仏教美術に魅了され、奈良に通いつめたことをきっかけに、日本古代史を研究。以後古代をテーマに意欲的な執筆活動を続けている。著書に『古代史謎解き紀行』シリーズ(新潮文庫)、『なぜ日本と朝鮮半島は仲が悪いのか』(PHP研究所)、『東大寺の暗号』(講談社+α文庫)、『新史論/書き替えられた古代史』 シリーズ(小学館新書)、 『天皇諡号が語る 古代史の真相』(祥伝社新書)、『台与の正体: 邪馬台国・卑弥呼の後継女王』『アメノヒボコ、謎の真相』(いずれも、河出書房新社)、異端の古代史シリーズ『古代神道と神社 天皇家の謎』『卑弥呼 封印された女王の鏡』『聖徳太子は誰に殺された』『捏造された神話 藤原氏の陰謀』『もうひとつの日本史 闇の修験道』『持統天皇 血塗られた皇祖神』『蘇我氏の正義 真説・大化の改新』(いずれも小社刊)など多数。新刊『神社が語る関東古代氏族』(祥伝社新書)



 


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  • 2015.07.18