「すべての女性が輝く社会づくり」は政府の暇つぶし政策なのか |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「すべての女性が輝く社会づくり」は政府の暇つぶし政策なのか

社会という荒野を生きる③

■「経済回って社会回らず」の現実を何とかする

 女性はそういうクソ野郎と結婚するな!(笑)。これは大事なこと。そうすれば結婚したい男性も学ぶよ。短期的には少子化に拍車がかかろうが、かまわない。家事をやらないクソ野郎と、男に家事をやらせようとしないクソ政府こそ、長期的な少子化要因なんだからな。

 ちなみに僕は、朝食も作るし、弁当も作ります。幼稚園への送りは僕がやることが多い。そんなことは当たり前だ。えらくも何ともない。幼稚園の送りをして分かることがあります。いつも同じお父さんにお会いするんです。僕のところだと、いつもお会いするお父さんは5人ぐらいかな。

 会社の問題で幼稚園に送る時間に合わないのかもしれないけれど、子育てにきちんと参画するという意識があるお父さんが限られているのも確実にあると思う。男の多くが、子供の送りに配慮しない会社になんか就職しないぞ、って思えば、人材がとれないから、会社だって変わる。

 国際的には、むしろこれが常識なんです。そういう社会的な合意を作るためにも、「経済を回すために男をフランスの倍働かせる」ってことが異常なんだから、これをまず何とかしろよ、ということです。当然ですが、女性だけじゃない、男性だって長く働きすぎなんです。

 それだけ長く働かないともたない経済なの? そんなの、潰せよ! 何のために働くんだ。働くために働くなんて、意味がない。日本より格段に短い労働時間で、国際競争市場で戦ってる国民国家があるわけだろうが。倍働いてやっと保てる経済。それで日本が経済大国だ? 馬鹿か。

 日本人はフランス人より男は倍、女も1・5倍働いて、この程度。しかもこれはパートを含めて均しての話で、総合職の人はもっと働いている。さらに今後は残業代を払わない「ホワイトカラーエグゼンプション」も導入されるから、いよいよ厳しい労働条件になる可能性がある。

 こういうのは経済の問題じゃないんだ。社会の問題です。社会を生きる僕たちの問題です。社会が分厚くなければ、最終的には「経済回って、社会回らず」ということになるしかない。そうなると、経済がポシャった途端、社会の穴に落ちて、人がどんどん死ぬ。

 実際にそうなってるでしょ。それが1998年からの自殺者の急増なんです。97年はアジア通貨危機が波及し、山一証券や北海道拓殖銀行などが倒産した。いろんな会社が潰れた。経済が回らない状態になって、社会の穴に落ちた人たちが多数死んだ。構造は何も変わっていない。

 社会を回すために経済があるんじゃないの? 「経済回って社会回らず」なんて本末転倒じゃん。いったい何のために生きてるんだよ。経済が回らなくなったら自殺者が急増って何なの。いずれはまた経済が回らなくなる。経済を回すのを優先順位筆頭にして、どうするつもりだ。

 経済を回すために長時間労働して社会を空洞化させる。おかしいと思わないの? 女性の話に戻せば、公共交通機関でベビーカーを利用する女性を蔑む輩や、子育て夫婦なんかに俺の税金を使うなとホザく非モテ独身男が、珍しくない。いやはや本当に国辱もの。

 安倍晋三を応援してるヒマがあったら、こういう馬鹿に対してこそ愛国者は激昂しろよ。そして内閣官房は、こういう馬鹿をのさばらせない対策をとれ。最初に「内閣官房はヒマすぎ」と言ったが、頼むから、幾らヒマでも、こんなにトンマなことをぶち上げて外国にまで恥を晒すのはやめろ。

「社会という荒野を生きる。」より

KEYWORDS:

オススメ記事

宮台 真司

みやだい しんじ

社会学者

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)、『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』(bluePrint)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(二村ヒトシとの共著、KKベストセラーズ)、『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する』(bluePrint)、『大人のための「性教育」 (おそい・はやい・ひくい・たかい No.112) 』(共著、ジャパンマシニスト社)など著書多数。

この著者の記事一覧