振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈後編〉 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈後編〉

もう戻る必要はない。自首をした少年は。

■その後の顛末

 その後の顛末を話そう。紆余曲折はあったが、結局新之助は自首をしてくれた。逮捕約1ヵ月後に少年鑑別所におくられた。

 私は約束をしていたので、一度鑑別所に面会に行った。

 面会室で一人待っていると、鑑別所職員に連れられて新之助が入ってきた。

 茶色に染めた髪の毛は真っ黒になっており、あごひげもきれいにそり落としていた。足取りもしっかりとしている。

 

「神里さん、今回はほんとうにありがとうございました。出たら鳶か大工をして真面目に働くつもりです」と凛とした佇まいで真剣な顔つきだった。

「お前の真面目になるは、あてにならないからな」私は少し意地悪なことを言って笑った。

「そんなことないっすよ」新之助ははにかみながら言った。

 もう大丈夫だな。私はそう思い鑑別所をあとにした。

※氏名は仮名です。少年のプライバシーを尊重し、個人が特定されないように配慮しています。

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神里 純平

1979年生まれ。沖縄県在住の会社員。

中堅のリサイクルメーカーにサラリーマンとして勤務し、会社内から出る産業廃棄物の収集運搬やグループ内の在庫移動の業務に従事する毎日。少年の頃には紆余曲折があったが、現在は友人たちと一緒に、仕事後や休みの日に子どもたちに格闘技を指導することがライフワークとなっている。好きな言葉は「人生一生雑巾がけ」。著書に『沖縄裏の歩き方』(彩図社)がある。


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