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インフルエンザは「なぜ」毎年流行するのか?

夏には流行しない理由、インフルエンザの歴史も。

■言い換えよう。なぜ夏には流行しないのか。

 話を戻しましょう。インフルエンザはなぜ冬に毎年流行するのか。言い換えるならば、なぜ夏には流行しないのか。

 これはですね、インフルエンザ・ウイルスは寒くて乾燥しているところで元気になりやすいのです。だから、冬に流行しやすい。

 もっとも、ウイルスの性格だけで流行が決まるわけでもないようです。例えば、冬は寒いので人が屋外に出にくい。密閉した建物の中に閉じこもりやすいのでインフルエンザ・ウイルスが室内で人から人に伝播しやすい、という要素もあるようです。

 また、冬には日光にあまり当たれません。日光がないと体内でビタミンDが作れません。ビタミンDは免疫力に寄与していますから、冬には免疫が弱ってインフルエンザにかかりやすい、こういう理由も関与しているようです。

 要するに、いろんな理由が複合的に絡み合って、冬にインフルエンザは流行しやすいのです。

 もっとも、インフルエンザが冬に流行する「正確な」理由は現在も分かっていません。こんなにシンプルな自然現象でも案外、科学が理解していないことって多いんです。「なぜ」問題、難しいですね。

 世界規模で見ますと、北半球は11月くらいから3月くらいまでがインフルエンザの活動性が高いです。南半球は逆でして、日本では夏の時期がちょうど冬に当たりますから、8月とかがインフルエンザが流行しやすい時期になります。で、赤道直下のような熱帯地域、四季の違いがはっきりしない、「冬」がやってこない地域では年がら年中インフルエンザが見られます。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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  • 2018.11.09