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子供の頃食べた「甘口納豆」。自宅介護の母に出してみた結果…

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第二十九回

■「甘口」だけじゃない。夕暮家の納豆の食べ方2パターン

 子供の頃、我が家の納豆の食べ方には2パターンがあり、それを「甘口」「辛口」と呼んでいた。

 夕暮家の甘口納豆……納豆に生卵と砂糖をかけ、かき混ぜて食べる。

 夕暮家の辛口納豆……刻んだ青菜とネギを納豆にまぶし、醤油と辛子で食べる。

 食卓に納豆が供されるときは、いつもこの2種類の鉢が並んだ。「甘口納豆」が食べたい人は、甘口の鉢から好きなだけよそって食べればいいし、「辛口納豆」が食べたい人は、辛口の鉢からよそって食べればいい。

 おぼろげな記憶しか残ってないが、母とぼくは甘口を食べて、父は辛口しか食べなかった。兄は両方おいしそうに食べていた。たぶん、甘口はもともと母の食べ方で、辛口は父のために用意されていたのだと思う。

 だからぼくは、砂糖をかけて食べていた派になるが、そういう認識はない。「納豆に砂糖をかける」のではなく、「卵に砂糖を入れて」それを納豆に混ぜて食べる。こっちの言い方のほうが正しいからだ。

 考えて欲しい。玉子焼きやオムレツをつくる場合は、砂糖を入れるのが普通だろう。不自然でもなければ、気持ち悪い食べ方でもない。つまりこれは、納豆に砂糖をかけるのがおかしいかどうかの話ではなく、「卵かけご飯に砂糖をかけるのは、おかしいかどうか」というテーマに近い。

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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