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“現実は受け入れるものである”「如実知見」の教え

向谷匡史氏インタビュー④

■「如実知見」

 これから先もそうなるわけですよ。すべて受け入れるしかない。それを「如実知見」と呼んでいるのですが、私流に解釈すれば、“現実は受け入れるものである”と。我々は受け入れる前から変えようとするからうまくいかないのだと。だから、まずは受け入れる。それがわかってくると、良いことも悪いことも、それは勝手な自分の判断にすぎないわけで、悪いことは良いことの素になっているかもしれないし、その逆かもしれない。そこに気が付くことが大事なんです。

 教義を完全に理解したり、仏的な生き方をしなさいということではなく、“そういうものなんだ”と知って、また日常の生活に戻ればいいのです。そういう視点があることを知るだけでいいのです。この「因縁生起」こそ、わかりやすい仏教の肝ではないですかね。

 もうひとつ、章立てはしていないのですが、「往相回向」という考え方も重要です。亡くなったら浄土に行って、仏になってこの地に帰ってきて、仏の働きとして勤めるということを意味していますが、それに引っ掛け、作品の中で親鸞を現生に帰しているのですよ。同じ宗派の坊さんが読んでも、決して荒唐無稽ではなく、ちゃんと教義に則ったものだと、わかってもらえる。それは声を大にして言いたいところですね。

〈第5回に続く〉

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向谷 匡史

むかいだに ただし

 1950年生まれ。広島県呉市出身。広島県立呉宮原高校、拓殖大学政経学部卒業。大学在学中からフリーライターとして活動を始め、卒業後、「週刊ポスト」専属記者となる。事件、スポーツ、芸能記事のほか、対談、人物記事をシリーズを担当する。



 その後、編集企画会社を設立。各種パンフレット、会報等の制作から雑誌の取材記事、単行本の執筆編集まで幅広く活動。

 作家に転向後、単行本の執筆のほか、「漫画ゴラク」「漫画サンデー」「週刊アクション」等で劇画原作を手がける。



 2000年11月、保護司拝命。2006年5月、浄土真宗本願寺派(西本願寺)で得度。2013年4月、同派で「教師」取得。空手道「昇空館」館長としての顔を持つ。異色の作家であり僧侶として知られる。



 執筆ジャンルは仏教から人間関係術、さらにヤクザの心理術まで多岐にわたり、人間社会を鋭くとらえた観察眼と切れ味のよい語り口に定評がある。


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