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究極のオールラウンダー。「イギリス駆逐艦」万能の活躍

「艦隊のワークホース」こと万能軍艦の実像に迫る!③

■「七つの海の覇者」の小さな働き者(イギリス海軍編)

1942年9月、航行中の援ソ輸送船団PQ18に属する輸送船が被雷し爆発した瞬間。その手前左側を進むのは、護衛にあたっているトライバル級艦隊駆逐艦エスキモー。

 駆逐艦発祥の国であるイギリス(「駆逐艦の誕生」を参照)はまた、世界中に海外領土を有する「七つの海の覇者」をもって任ずる海洋大国でもあった。
かようなイギリスにとって、駆逐艦は自国の近海の北海や英仏海峡などで敵の水雷艇を「狩る」という生来の任務だけでなく、当時、世界最大規模を誇ったグランドフリートと行動をともにし、水雷艇には航行上の荷が重い外洋へと進出。敵の主力艦を雷撃することもまた、重大な任務とされていた。

 第一次大戦が勃発すると、ドイツはイギリスの生命線たるシー・レーンを遮断すべく大量のUボート(潜水艦)を投入。そこで同海軍は、潜水艦と戦うことも、小回りが利いて船足が速い駆逐艦の任務に加えた。

 かくしてイギリス海軍は、第一次大戦の戦訓に基づき、「沿岸海域での水雷艇の駆逐」に加えて「大洋での海戦時の雷撃」と「Uボートの駆逐」という3つの主な任務を、駆逐艦に課すことにしたのである。さらに第二次大戦勃発直前の頃には、「艦隊における対空防御」という4つめの任務が加えられた。

 この方向性に準じて、戦間期のイギリス海軍は駆逐艦の建造と配備を推進した。同海軍の駆逐艦はA級、B級、C級という具合に、建造の順番に従って各級がアルファベット順に命名されており、これに合わせて、例えばB級ならビーグル(Beagle)、バシリスク(Basilisk)、ブランチ(Blanche)のように頭文字が「B」で始まる単語が艦名とされていた。しかもすでに戦間期には、この命名法則の2巡目に至っていた。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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