■乗り越えられる逆境と、乗り越えられない逆境

「ずっと逆境にさらされて生きてきて、その理不尽さにイラ立ちを覚えていたんです。その一方で、不幸の度合いでいえば僕よりも不幸な人は絶対にいることも認識していました。そこで、生まれながらに僕以上にハードモードで、うなるような逆境の中で生きている人がいる場所に行って、自分の価値観がどう変化するか(あるいは、しないか)を確かめに行きたい、と思いました。行き先は、信頼していたUBSの先輩達が口を揃えておすすめしてくれた、インドにしました」

 “圧倒的逆境との対峙”をテーマに据えたインド旅行。そこで彼を待っていたのは、今後の人生の指標となるほどの出来事だった。

「インドの東から西に移動するために寝台列車に乗っていると、物乞いの少年が僕に近づいてきたんです。彼に何度も服を引っ張られても無視をしていると、今度は二本の棒を使ってドラムのマネごとをはじめました。「こちらは寝ているのに、うるさいなぁ」と思ってふっと少年の方に目をやると、その子の下半身がなかったんです」

 二本の腕を器用に使う少年の姿を見て、感情が揺さぶられた前田さん。お互いに言葉は通じなかったが「足は不自由だけど、自分は残されたこの両腕を使って人を楽しませることができる。僕のパフォーマンスがいいと思ったらお金を恵んでほしい」と言っているような気がした。そこから、「生きるんだ」という、すごく大きなエネルギーを感じた。

 

「彼の懸命に生きようとするエネルギーに感動して、そのとき持っていたキャッシュを全額少年に渡しました。おそらく日本円で2万円前後でしたが、彼にとっては大金。しかし、僕のお金を受け取った少年は、周囲のインド人の怒りを買って、次の駅で外に放り出されてしまったんです。僕が彼らの行動を咎めると、『その少年に恵みを与えることが罪なんだ』と」

 あまりの「圧倒的逆境」に愕然とする前田さん。この時、前田さんは「世界には2種類の逆境があること」に気がついたと話す。

「逆境には、努力で乗り越えられるタイプの逆境と、努力では乗り越えられない逆境の2つがあることに気づいたんです。これまで自分に課せられてきたのは、前者の、努力で乗り越えられるタイプの逆境でした。しかし、インドで出会った少年は、後者の境遇に立たされていると感じました。彼自身に問題があるわけでなく、社会の仕組みに問題があることを痛感しました」

 現段階では、少年の努力や才能、生きる熱量が正当に報われる可能性は低い。しかし「彼がもつ努力や熱量を思い切りぶつけられる仕組み・機会さえ作ってしまえば、彼はそこで必ずリターンが得られるはず」と、前田さん。

「たとえば、投げ飛ばされた駅の前に、ライブ配信ができるブースを設置すればいい。そこで、彼が僕に披露してくれたのと同じパフォーマンスをする。それを見て、世界の誰かが同様の感動を受け、彼に“ギフト”を送り、それを近くのATMで現金化できる。こんな仕組みがあったらどうか。ハンデキャップを抱える人に、無条件で恵みを与えるのではなく、努力や熱量を投入できる仕組みを提供することこそが、僕らのコンセプトでもある『努力がフェアに報われる社会』の実現なんです」

「努力は報われる」……言葉として耳にする機会は多いが、実際にすべての努力が報われているわけではない。「SHOWROOM」が提供するのは、あくまでフェアにチャンスを与える仕組みであり、それ以上の高みに登れるか否かは本人次第。それこそが、本当の意味で「努力が報われる社会」といえるのかもしれない。

次のページ 30代のうちに「世界一の企業」を目指す