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高い?ドレスコードがいる?「老舗」の意外な実情

意外と知らない老舗の楽しみ方

◆実は気軽に足を運べる場所

 

 老舗とは、ただ昔から営業を続けているだけではない。技術や味を代々受け継ぎ、いまもなお愛されている店のことだ。デジタル大辞林(小学館)でも、「代々続いて同じ商売をしている格式・信用のある店」と定義している。

 東京には、老舗店が集まる「東都のれん会」という組織がある。同会によれば、「江戸の昔より明治初年にかけて創業された、百年以上の伝統を有する、古いのれんの店の集い」とのこと。和装小物や着物などを扱う店のほか、江戸の味を今につなぐ名店も数多く見られる。

 こうした老舗は高級なイメージがあり、気軽に足を踏み入れることができないと思うかもしれない。たしかに、市販品と比べると価格が高いものが多いが、伝統技術で作られたものは長く使うことができ、コストパフォーマンスが優れているといえよう。

 料理の場合はどうだろうか。うなぎや寿司などは価格が高い傾向がある。しかし、これは老舗に限ったことではないし、工業化されたものよりも高くなることはやむを得ない。伝統の技法を守るその味は洗練されていて、価格に見合っているといえるだろう。そんな店でもランチはリーズナブルな価格で提供していることがあり、行列が絶えない店も少なくない。

 こうした老舗の味を気軽に楽しみたいなら、「割烹」がおすすめだ。現在では料亭と混同されることもあり、高いイメージがあるかもしれないが、じつはカジュアルに本格的な日本料理を楽しめる穴場なのだ。

 割烹の「割」は割く、「烹」には煮るという意味がある。店によってメニューは異なるが、刺身や焼き物、煮物など、日本料理のすべてを楽しめるのが一般的だ。

 割烹に取材へ行くと「現代のお客さんは、割烹ではコースを頼むものだと思っている人が多い」という声をよく聞く。しかし、単品での注文も可能だし、予算や好みに応じて料理を提供してくれるという。そんな粋な楽しみを知らない客は増えているのだとか。

 料理店へ行くと、店に置かれたメニューの中から選ばなくてはいけないと思いがちだ。あれが食べたい、これが欲しいなどといえば、「ワガママな客」だと思われないか不安を覚えるかもしれない。しかし、実際にはカウンター越しに「こんなものもありますか?」とリクエストすることも可能。すべてに応じてくれるとは限らないが、できるだけ客の要望に応えたいし、「メニューにない料理を頼まれると粋だと感じる」という店主が目立った。

 また、老舗店へ行くにはスーツなどきちんとした身なりが求められると思いがちだが、そんなことはない。ドレスコードはなく、散策途中にふらっと立ち寄ることも歓迎とのことだった。江戸料理は屋台から発祥したものも多く、現代でいえばファストフードのようなものだ。そう考えると、もっと気軽に足を運べるのではないだろうか。

 店主によって考え方は異なるが、発売中の本誌6月号で紹介した料亭は、仕事帰りなどにも立ち寄りやすい名店揃い。「江戸の古の味を楽しむ」というコーナーでは、江戸の味を守り続ける老舗を紹介している。古地図めぐりを楽しむときには、コースにぜひ加えてほしい。

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