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高級住宅地・成城学園で見つけたレアな“英語”標識とは?

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第13回:英語入り「徐行」標識にまつわる事情

 ■高級住宅街の新「徐行」標識

 ということで、連休明けのある日、筆者は現地へ足を運んだ。なるべく自然に見えるよう、地元民が通り慣れた道を散歩してるだけですよ、という様子を必死に装いつつ標識を探し歩く。しかし目的の標識はなかなか見つからず、1時間以上さまよう羽目になった。

 と、急に不自然なほどの急坂が見えてきたので、これはと思って近づいてみると、みごとビンゴであった。物件は、急坂の始まりと終わりに2枚ずつ、両方向に向けて設置されていた。なるほどこの斜度とカーブと道幅では、スピードなど出していたらえらいことになるから、徐行標識設置も納得である。設置年月日は平成29年10月との記載があり、できたてホヤホヤだ。

写真を拡大 坂の上にあった新型「徐行」標識

写真を拡大 坂の下にあったもの。「ここから」を意味する補助標識つき

 ということで無事目的の品はゲットできたが、ちょっと疑問も残る。他にも漢字の入った標識はあるのに、なぜ「一時停止」「徐行」の2種だけが英語入りになったのかという点だ。で、海外の標識の事例など調べていて、はたと思い当たった。

 これら標識の共通点は、赤い逆三角形という点である。実は、アメリカやEU圏には赤い逆三角形の標識があり、これは「道を譲れ」という意味合いなのだ。これと似たデザインの「一時停止」「徐行」の標識は、外国人ドライバーから誤解を受けやすいという判断だったのではなかろうか。

 しかし外国人からすれば、他の漢字入り標識だって不便であるに違いない。いずれこれらも、英語入りに改めてゆかねば筋が通らないのではあるまいか。国際化が進む現在、どうやら標識の世界も過渡期にきているといえそうだ。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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