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立川談志が弟子にしかけた激しい「無茶ぶり」、その真意

大事なことはすべて 立川談志に教わった第2回

 なぜそんなことをされるのか?

 これはズバリ言ってしまえば、「人から嫌われないための受け身」なのだと、今、あらためて思います。

 柔道を習おうと道場に行っても、最初から技を教えてはくれません。落語家に入門しても最初から落語をやらせません。まずは「受け身」からなのです。相撲で言うなら「股割り」なのかもしれません。やっておくと、大きな怪我が防げるのです。

 一門のぜん馬師匠から「一見無駄だとしか思えない前座だけど、やっておくだけで世間も評価してくれる。まず仲間内からはかばってもらえる」と、長い前座時代に言われたことがあります。

 逆に、しておかないと何を言われるかわからない。それが「前座」なのです。

   * * *

 談志師匠の無茶ぶりは弟子たちの落語センスを磨くためのものだったのですね。体育会系の部活の経験がる人ならわかるかもしれませんが、後になって考えれば、先輩たちの無理強いも意味があったことだと思えることもありますよね。これは社会人になってからも変わらないことなのです。会社に入って仕事を覚えるにも、最初は萎縮と緊張の連続。それを克服して、下地にしてこそ、自分の仕事を身につけていけるのです。

 さて、そんな談慶さんも晴れて見習い期間が終わって前座に上がり、芸名「立川ワコール」を頂きます。では、次回はそのあたりの話から。

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立川 談慶

たてかわ だんけい

昭和40(1965)年長野県上田市(旧丸子町)出身。1988年慶応義塾大学経済学部を卒業後、㈱ワコールに入社。セールスマンとしての傍ら、福岡吉本一期生として活動。平成3(1991)年4月立川談志門下へ入門。前座名立川ワコール。平成12(2000)年12月、二つ目昇進、談志より「談慶」と命名。平成17(2005)年4月、真打ち昇進。平成22(2009)年から二年間、佐久市総合文化施設コスモホール館長に就任。平成25(2013)年、「大事なことはすべて立川談志(ししょう)に教わった」(KKベストセラーズ)出版、以来、「落語力」「いつも同じお題なのになぜ落語家の話は面白いのか」「めんどうくさい人の接し方、かわし方」「落語家直伝うまい!授業のつくり方」「なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか」「人生を味わう古典落語の名文句」など「落語とビジネス」にちなんだ書籍の執筆。NHK総合「民謡魂」BS日テレ「鉄道唱歌の旅」テレ朝系「Qさま!」CX系「アウトデラックス」「テレビ寺子屋」などテレビ出演も多数。現在、東京新聞月一エッセイ「笑う門には福来る」絶賛好評連載中


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