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エディーHC「ボールに石鹸を塗る」驚きの練習法。その意図

選手を伸ばす適切なプレッシャーの種類と強度【「プレッシャー」の力⑤】

プレッシャーを避けるではなく、うまく利用する――。日々重圧の中で戦う日本のビジネスマンに向け、現在ラグビーイングランド代表で指揮をとるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)がアドバイスを送る。特別連載第5回。

■肉体的、精神的、戦術・技術的…複数のプレッシャーを化学物質のように混合する

――自分が抱えているプレッシャーの本質を理解し、プレッシャー耐性の鍛え方も含め、対応方法というものを確立していく。ジョーンズ氏はこういうアプローチを監督として、どのように現場で実践しているのだろうか?

 まず私にはラグビーチームの監督として、選手を鍛え、試合に勝つという最大のミッションがある。そのために、選手たちのプレッシャー耐性を鍛えるということは非常に大きな要素で、私はいつも肉体的、精神的、戦術・技術的…様々なプレッシャーを与えて選手たちを鍛えている。

 基本的に、練習で選手たちを試合より厳しい場面に置き、複数のプレッシャーを、化学物質を混合するかのように適切に組み合わせて、与えるようにしている。違った種類のプレッシャーを、どういう割合で混合し、どのようなタイミングで与えていくか最適なバランスを見つける。まさしくこれは、監督業のアートだと言える。

――具体的には、どのようなトレーニングになるのか。

 例えば、私はボールに石鹸を塗って、滑りやすくした状態で練習させたりしていた。この状況でもしっかりとボールを扱えるかをコーチ陣が見ているので、これは技術面だけでなく、精神面でもプレッシャーになる。また、試合以上に肉体的に負荷がかかるトレーニングをした後に、試合終了直前に僅差で負けている状態を想定し、そこからどうやって攻めるかを考えさせる。

 こうして、試合よりも厳しいプレッシャーの中で練習することによって、試合でのプレッシャーへの耐性を鍛えている。勿論、実際の試合でのプレッシャーには練習では再現できないものがあるが、できる範囲で徹底的にやるのが私のやり方だ。

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エディー・ジョーンズ


 



1960年、オーストラリア、タスマニア州バーニー生まれ。オーストラリア人の父と、日系アメリカ人の母の間に生まれる。1990年代初頭まで、当時オーストラリアの最有力州チームだったニューサウスウェールズ州の代表として活躍、その後引退し、コーチに転身する。2003年、オーストラリアの代表監督としてW杯準優勝、2007年、南アフリカのテクニカルアドバイザーとしてW杯優勝。2009年、サントリーのゼネラルマネージャーに就任。2010年度より監督も兼任し、日本選手権優勝。2012年、日本代表ヘッドコーチに就任。2015年のW杯では、世界的な強豪南アフリカ代表に歴史的な勝利をして、ラグビーファンだけでなく日本中の注目を集めた。現イングランドの代表監督。イングランド代表に就任してからチームは連勝街道を走り、今年2月のシックスネーションズが始まるまでは23戦22勝。今年のシックスネーションズは、3敗を喫したがまだチームは成長過程。2019年、日本で開催されるラグビーW杯での優勝を見据える。


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