エディーHC 選手時代の苦い経験。気付きを与えた1冊の本 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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エディーHC 選手時代の苦い経験。気付きを与えた1冊の本

自分を理解することこそ、プレッシャーを理解すること【「プレッシャー」の力③】

プレッシャーを避けるではなく、うまく利用する――。日々重圧の中で戦う日本のビジネスマンに向け、現在ラグビーイングランド代表で指揮をとるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)がアドバイスを送る。特別連載第3回。

■『The Inner Game of Tennis』から学んだ、「1人目の自分」と「2人目の自分」という考え方

――心配すべきこととそうでないことをハッキリと切り分け、自身へのプレッシャーからくる緊張は、確立されたルーティンで対処する、ジョーンズ氏。こうした達観した見方をするようになった原点はあるのか?

 私だって、若い頃はこうしたプレッシャーへの対応方法が分からずに、失敗したこともある。私がまだ選手だった24、5歳の頃、初めてシドニーの選抜チームの練習に呼ばれた。これは当時の自分にとっては大舞台だった。最初の練習では緊張のあまり手に汗をかいてしまい、まともにボールを投げることすらできなかった。

 この後、私は『The Inner Game of Tennis』 (W.Timothy Gallway著)というスポーツ心理学の本を読んだ。本の内容は、「1人目の自分」と「2人目の自分」、という切り口で書かれたもの。1人目の自分とは、自分の中にいる自分で、自分の考えを司る。これが、外見上の2人目の自分をコントロールする。なぜなら、頭の中で考えていることは、常に行動に表れるだからだ。

――この本の内容が自分を理解する助けになり、プレッシャーを理解することに役立ったと?

 私はスポーツの世界に長く生きており、試合でいい結果を出したい、勝ちたいという強い願いが、プレッシャーの源泉になっている。これがこの本でいう1人目の自分で、プレッシャーをポジティブに利用している時は、2人目の自分、即ち考えを行動に移す自分が、勝利の為に必要な行動をとる。

 ところが、初めてシドニーの選抜チームの練習に参加した時は、このプレッシャーがネガティブに働いた。つまり1人目の自分が、失敗したくないというネガティブな考えにとらわれ、2人目の自分は手に汗をかき、緊張のあまり基本プレーすらままならない状態になったのだ。要するに、自分の中に、プレッシャーをネガティブに感じてしまう自分がいると気付かされた。

次のページ大事な場面でネガティブな自分が出てしまったときは?

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エディー・ジョーンズ


 



1960年、オーストラリア、タスマニア州バーニー生まれ。オーストラリア人の父と、日系アメリカ人の母の間に生まれる。1990年代初頭まで、当時オーストラリアの最有力州チームだったニューサウスウェールズ州の代表として活躍、その後引退し、コーチに転身する。2003年、オーストラリアの代表監督としてW杯準優勝、2007年、南アフリカのテクニカルアドバイザーとしてW杯優勝。2009年、サントリーのゼネラルマネージャーに就任。2010年度より監督も兼任し、日本選手権優勝。2012年、日本代表ヘッドコーチに就任。2015年のW杯では、世界的な強豪南アフリカ代表に歴史的な勝利をして、ラグビーファンだけでなく日本中の注目を集めた。現イングランドの代表監督。イングランド代表に就任してからチームは連勝街道を走り、今年2月のシックスネーションズが始まるまでは23戦22勝。今年のシックスネーションズは、3敗を喫したがまだチームは成長過程。2019年、日本で開催されるラグビーW杯での優勝を見据える。


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