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卓球女子の注目。平野美宇の「速さ」は中国勢をも呑み込む

4月29日~卓球世界選手権開幕。宮﨑強化部長に聞く、女子日本代表の現在地①

 

中国勢にも通用する平野美宇の「速さ」

宮﨑氏をして「中国を倒す可能性が一番ある」と言わしめる平野美宇。
(写真:アフロ)

--続いて平野美宇(世界ランク6位)。昨年のアジア選手権で中国のトップ3人を破って優勝。世界選手権も銅メダル。しかしその後は徹底的に研究され、中国や他国の格下選手にも敗れる大会が続きました。

宮﨑 平野美宇は世界で一番「タイミングの速い」選手です。この速い卓球が入れば、中国だって手を付けられない。中国が一番恐れている選手だと思います。

 普通はピン・ポンと来て、打球が上がったところをパンと打つところを、平野はピン・ポンの後、打球の上がり際をすぐ打っちゃう。卓球は自分のところに着いてから打つまで0・2秒なんですね。返ってくるのは0・4秒。それが平野はもっと速いタイミングで返ってくるので、相手は慣れようにも慣れない。

 ただし、リスクのある紙一重の卓球なので、舞台が大きくなるほど出るけど、小さな舞台では出ないんです。観客が1万人も入るような試合で、ぐわーっと入り込んで髪の毛が逆立つくらいの集中力がないと、あの爆発的なパフォーマンスは出ない。

 だから普段の練習でも、10本のうち5本入るくらいですよ。ところが大舞台になると、8本、9本入る。それが平野美宇の特徴です。

--今年1月の全日本選手権も苦戦続きでしたが、追い込まれると突然スイッチが入ったかのように、すごいプレーをしていた。結局、決勝まで勝ち進み、伊藤美誠に次ぐ準優勝。

宮﨑 そうでしょう。全日本はあっち向いたりこっち向いたりしながらホニャホニャやって、ああ、もう負けたかなと思ったら、ゲームオール・デュースでやっと勝つ。あれが実力ではありません。

 平野はアジアチャンピオンになり、全日本も去年優勝して、もうそのステージは終わっている。世界選手権のメダルを獲ってから、まだ同じレベルの舞台が来てないんです。

--ということは、最近、調子が悪いわけではないんですか。

宮﨑 練習を見れば、今、絶好調ですよ。ただし、それが今度の試合で出るかどうか。1回戦じゃ出ない。決勝なら出るかも知れない。「大女優」なんでしょうか(笑)。

 そこがメンタルの難しさで、常に100%を出せるのは一番すごいけど、人間はなかなか100%を出せるものではない。1万円のステーキの味を知った人は、何百円のステーキをうまいと思って食べられるかというと、そこには全力で向かえない。

 アスリートとしては天才肌で、いつも自分の実力に近い力を出す努力派とは違う。こういう選手が東京五輪のような大舞台で、中国を倒す可能性が一番あるんだと思います。

第2回に続く。次回は伊藤美誠、早田ひな、長﨑美柚について。

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田端 到

たばた いたる

1962年生まれ。週刊誌記者を経てフリーのライターに。競馬、野球を中心に著書多数。趣味は五輪競技アスリートのSNSを観察すること。卓球は17年アジア選手権と18年グランドファイナルを現地観戦。


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