■自転車で走ると「融雪溝」が怖い

 自転車が車道を走る危険性も、田舎と都会ではだいぶ違うのではないだろうか。いや、田舎というよりも、うちの地方特有の話をしたい。

 雪国の道路には、消雪パイプという設備が多く備え付けられている。道路の真ん中に埋められたパイプを通して、雪を溶かすための水が路上に散布される、雪国にはなくてはならない装置だ。実家のある新潟県長岡市はこの消雪パイプの発祥の地とされ、小さな道路にまで行き渡っている。

 消雪パイプの付いた道路には、それとセットで「融雪溝」が付いている。雪を溶かした水を排水する必要があるため、道路に傾斜をつけて水が両サイドへ流れるようにして、道路脇の側溝へ流す。また、道路沿いの民家や商店が、雪かき作業の際に融雪溝へ雪を捨てる。大量の排水をしなくてはならないから、通常の道路の雨水を流す排水溝よりも広い溝が両サイドにあり、そこにフタがかぶせてある。

 自転車で車道を走っていると、この融雪溝が時として危険の元になりかねない。
 フタの上を走ればボコボコしたり、段差があってタイヤを取られることもあるし、フタを避けて走ろうとすれば、その分、車道の真ん中に寄らなくてはいけない。大型トラックがびゅんびゅん走っているのに。

「誰も歩いていない歩道のほうがよっぽど安全なのに、なぜこんなリスクの高まる車道を走らなくてはならないのか?」

 これが毎日、自転車を愛用していた人間の、偽らざる気持ちだった。

 2014年、新潟県のある市長さんが、市内の小・中学校の児童生徒と保護者に「交通事故防止のため、なるべく自転車に乗らないように」求める文書を配布して、全国的な話題になったのを覚えているだろうか。その数ヶ月前に、自転車事故で命を落とした市内の中学生がいたことがきっかけだった。前年には道路交通法の改正があった。

 しかし、このニュースが報じられると「非常識な提言だ」「自転車を禁止するより、ルールを教えることが先」などと、全国から反対意見が殺到。ネットには、文書の撤回を求める署名サイトまで立ち上げられた。

 伝えられる世論を見る限り、市長を叩く声が圧倒的に多く、擁護派の意見はほとんど聞こえてこなかった。

 あの騒動は、雪国の道路事情の特殊さも考慮した上で議論をして欲しかったと、今さらながら思う。

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