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評論家・宇野常寛、出版不況の中の「本のテーマの決め方」

宇野常寛さん3月毎日更新 Q26. 「著作のテーマは毎回、どうやって決めているのですか?」

「BEST T!MES」連載30問30答、3月は宇野常寛さんを特集! 自ら企画ユニット『PLANETS』を主宰、近年はメディアでの活躍も増える中、評論家として最新作『母性のディストピア』が大ヒット中。多彩な活動を続ける彼の「素顔」に30の質問で迫ります。

出版不況の中であえて紙を出すことの意味

 

 僕の中では「単著」と「そうでないもの」とでは、本の作り方を明確に分けていますね。例えば、単著のなかでも『ゼロ年代の想像力』や『リトル・ピープルの時代』、『母性のディストピア』は“宇野常寛の代表作”にするためにも、自分にとって一番大事なテーマを書きました。そのためにも執筆には、じっくり時間をかけましたね。僕は対談本や共著を何冊も出していますが、そういった「単著ではないもの」は割と外部から持ち込まれた企画が多いです。要は、編集者や共著相手から来た球を打ち返している感じですね。あとは『PLANETS』の連載をまとめた本もあって、そういう「本にしたらもっとハッキリ伝えられる」と思って作ったものには共著も多いですね。こんな感じで、単著とそうではないものとでは明確な違いがあります。

 

 出版不況の中であえて紙の本を、しかも『なかなか売れづらい』と言われているハードのものを出すというのは趣味の問題かもしれません。

 「どれくらいの期間をかけて本を書くんですか?」と聞かれることもありますが、製作にかかる過程はその本によって全然違います。2017年に出た新刊の『母性のディストピア』は、本の原型となった連載は10年ぐらい前のものだったりしますし。代表作で見ると『ゼロ年代の想像力』は2008年で、『リトル・ピープルの時代』は2011年、そこから『母性のディストピア』までは6年の間隔が空きましたが、本当はもっと早く出したかったんですよ。でも、他の仕事の都合や時間のやりくりによって遅れただけですね。まあ、本の製作期間は一概には答えられないですね。

〈明日の質問は…… Q27.「『母性のディストピア』が発売されて、周りからの反応は?①」です。〉

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宇野常寛・著母性のディストピア

 

宮崎駿、富野由悠季、押井守--戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか?

宮崎駿論4万字、富野由悠季論10万字、押井守論10万字の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
そして『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』――現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?

『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。

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宇野 常寛

うの つねひろ

評論家。1978年生。批評誌〈PLANETS〉編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『母性のディストピア』(集英社)。石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)、『静かなる革命へのブループリント この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)など多數。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。京都精華大学ポップカルチャー学部非常勤講師、立教大学社会学部兼任講師など、その活動は多岐に渡る。


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母性のディストピア
母性のディストピア
  • 宇野 常寛
  • 2017.10.26