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「素敵な暮らし」のミニマリズム

「最小限主義の心理学」不定期連載第14回

■「下りた」という感覚

「下りた」というのが近いのか。

 振り返ると、松尾祥子さんとの対談で、「キャンプもいいけど、いい道具を揃えようとすると、また競争になる」と言われたのがターニングポイントだったような記憶がある。ミニマリズムで本を捨てて、モノで自分を自慢するのをやめたはずなのに、これからもモノでの自慢競争はいつでもエントリーできると気づいた。

 気づかぬうちに、エントリーしている。

 それ以来、エントリーに関しては、とりあえず、「下りる」。

「下りる」カテゴリがいつのまにか、「素敵な暮らし」にまで及んだようだ。

 ただし、人の暮らしやモノを「素敵だ」と思う心は変わらない。

「素敵」のない暮らしは、外側からはみすぼらしく見えるのかもしれない。

 昔憧れた、マンハッタンでの都会的な暮らしでもなく、和の慎ましい暮らしでもない。

 友人と楽しく飲み歩くわけでもなく、お洒落な服を着てお洒落なお酒を嗜むのでもない。

 憧れたこと、なんにもしていない。

 なのに心は清々しい。

 幸福である、というより、心が健康であるというのが相応しい。

 そして、そういうふうに健康な人が、世の中にははるか昔から、今の時代も、たくさんいる。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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