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「アンダークラス」の恐怖。救いはあるか。

【階級社会】を橋本健二氏が徹底解説2/2

■「階級社会」は決して他人事ではない

トオル…このまま格差が広がっていくのを僕たちはあんぐり見ているしかないんでしょうか。どうすればいい方向に行きますか?

橋本…まず事実を知ることからです。ひとつが「格差が拡大している事実」。これも、まだまだ知らない方が意外に多い。もうひとつが「格差が拡大すれば全ての人が不利益を被る事実」です。

シズカたとえばお金持ちであっても、他人事として捉えちゃだめね。

橋本…格差が拡大するとどうなるか。人々の間に敵対心が生まれ、連帯感が薄くなります。その結果、犯罪が増える。ストレスが増えるので健康状態も悪化する。事実、様々な研究から格差が大きい国では、犯罪発生率が上がって、平均寿命が短くなるということが確かめられています。

 もうひとつ問題なのが、生産性が低下してしまうことです。ピラミッドの底辺にいる人たちの能力がいかされなくなる。本来は能力がある人でも非正規の単純労働ばかりさせられてしまう。また貧困な家庭に育つ子どもたちは、進学することができず、その能力を伸ばすことができなくなります。こうして人的資本が不足し、経済成長率も低下してしまいます。

 OECDの推計によれば、日本は1990年から2010年の間に、GDPが17.5%成長していますが、この間経済格差が拡大したことによって、GDP成長率は5.6%引き下げられているのです。つまり格差拡大がなければ、GDP成長率は23.1%に達していたということ。

シズカ…そんなに経済成長のマイナスになっていたなんて!!

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橋本 健二

はしもと けんじ

1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。専門は理論社会学。「階級」にまつわる著作多数。


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