合戦で刃こぼれした刀はどうしたのか その場で修理? そのまま使う? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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合戦で刃こぼれした刀はどうしたのか その場で修理? そのまま使う?

発売中!『歴史人』3月号の特集は「日本刀大図鑑」

 しかし、戦場では誰かに修理を依頼しているどころではない。刀が曲がったりすれば、命に関わるのだ。軍記物には曲がってしまった刀剣を馬の鞍に押し当てて延ばしながら戦ったという記述がある。それだけ緊急性の高いことだったということを意味している。また、『太平記』には、足利基氏が武蔵野の戦いで刀が“ささら”のようになってしまった際、小刀で削りなおして戦ったとされる。武将たちにとって刀のトラブルとは、即命に関わる緊急事態だったことがよくわかる。戦場での必要性から、大久保彦左衛門は腰に砥石をぶら下げていたという。
 刀匠によるメンテナンスはできないため、合戦の場では即席で修繕がなされた。ただし、こうした素人によるその場しのぎの手入れというのは、後世における美術品としての刀の価値を大きく落としてしまう。現存する刀には、研ぎ減りしたもの、素人の研ぎにより凹凸の出たものがある。もちろんこうしたものは、合戦で使われた貴重なものとして扱われてこそしても、美術品としての価値はなくなってしまうのだ」(文・山河宗太、監修・鈴木眞哉)

 その場で直すのは当たり前。何しろ自らの命がかかっているのだから。

『歴史人』2018年3月号「日本刀大図鑑より〉

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