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ネム「580億円」はハッカーから取り戻せるか?

『ブロックチェーン入門』森川夢佑斗氏に聞く②

■ハッカーからネムを取り戻すのは難しい。

 現在の状況ですが、ハッカーのアドレスはわかっていますがそれ以上でもそれ以下でもありません。口座の番号までは把握しているが、個人の特定や暗証番号までは特定できないということです。

 しかし、先程のカラーボールの例を思い出していただければ分かるように、仮に取引所に持ち込まれた場合に、換金を断ることはできます。そうして犯人を「困らせる」ぐらいはできるでしょう。

 これからハッカーの秘密鍵を特定して、ネムを取り返す、ということも理論上はできます。が、特定にかかる途方もない時間と工数を考えると現実的ではありません。

 今後の最高のシナリオとしては、犯人側が交渉に応じネムをコインチェックに送り返すこと。ただこの可能性はかなり低いと感じています。

 最悪のシナリオは、犯人が盗んだネムを無差別に送金して、カラーボールが誰についているか分からなくしてしまうこと。取引所側としても、そのカラーボールがついている人が数百人規模になれば悩むはずです。「全部を断ると機会損失になってしまうかも…」と。そこで犯人の方が勝ってしまうスキが生まれる可能性があります。また取引所をかまさずに物と交換されると流石に追えません。結論としては、盗まれたネムが戻ってくる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

 読者の方にお伝えしたいのは、今回の1件に限らず取引所に通貨を預けるリスクは常にあるということ。取引しないような大きな金額に関しては、ウォレット等、自分で管理することをオススメします。

昨年5月に上梓した『ブロックチェーン入門』(ベスト新書)は好調な売り上げを記録。現在は、盗難リスクの低いウォレットアプリの開発に注力している。

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森川 夢佑斗

もりかわ むうと

京都大学在学中にAltaApps株式会社を創業し、仮想通貨のウォレットアプリ開発やブロックチェーンに係るコンサルティングを行う。現在は、株式会社Gincoの代表取締役として、仮想通貨時代の新たな銀行の構築を目指す。著書に『ブロックチェーン入門』(ベスト新書)、『一冊でまるわかり暗号通貨2016~2017』(幻冬舎)など。


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  • 2017.05.09