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風俗女子が社会とつながるために。

「セックスワークサミット2017冬」レポート 前編

「自己愛」が自分自身を救う!

 こう書くと、楊貴妃やクレオパトラのような、一般人の近寄りがたいオーラを放つ絶世の美女を想像されるかもしれないが、あや乃さんご自身はとても柔らかい雰囲気の可愛らしい女性で、講演は終始和やかな雰囲気で進行した。

 あや乃さんがFJSの活動を始めたのは、「仕事の悩みを話せる場が無い」という壁にぶつかったことがきっかけだった。働いている中で、当然仕事がうまく行かなくなる時や、気分が落ち込んでしまう時もある。そうした時に、周りに話せる人がいない。お店のスタッフにも「面倒臭い子だと思われて、仕事を干されてしまうかも」と思うとなかなか話せない。

 そこで「同業の女の子同士で話せる場を作りたい」と思い立ち、女子会を開いてブログで告知することから始めた。そこから数年をかけて活動が徐々に広がり、現在の会員は約100名に達している。

 FJSの活動を通して、風俗店で働く女性のモチベーションアップセミナーなどの講師も務めているあや乃さんは、風俗女子がお店やお客、仲間や社会、そして自分自身とつながるために必要なキーワードは「自己愛」だと語る。

 見た目はとても素敵なのに、自己愛が低いために仕事で思うような成果を出せなかったり、プライベートでも幸せになれない女性は少なくないという。

 あや乃さん自身、風俗嬢になる前は、社会に馴染めず転職を繰り返しており、借金と貧困の生活から抜け出すために風俗の世界へ入ったとのこと。経験を積み、チャレンジを重ね、多くのリピーターを得る中で自己愛を高めることができ、お客様からお客様の紹介を頂ける人気風俗嬢へと成長することができたそうだ。

 自己愛がきちんと備わっていれば、自分に自信が持てる。周りに流されず、凛とした姿勢で接客をしていれば、お客さんからの無理な要求に対しても、はっきりと断ることができる。そしてお客さんからも恨まれない。健康管理や自己投資についても、自己愛の存在が成否を左右する。

 ただし、自己愛は、「一人では」高めることができない。そして、「ひとりでには」高めることもできない。

 孤立しがちな風俗女子がお店やお客、仲間や社会、そして自分自身とつながるための仕組み、その過程で自己愛を高めていく仕組みを作っていくこと。

 それこそが、夜の世界で働く女性の安心と安全を守っていくため、そして働く女性に夢と自信と明るい未来をもたらすための条件になる、と確認させられたサミットだった。

KEYWORDS:

「セックスワーク・サミット2018春「知ってスッキリ!『風俗と税金』入門講座」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2018年3月18日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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