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有馬温泉繁栄の秘密 サービスガール「湯女」とは何者か

仰天! 入浴の日本史② 宗教由来の入浴がレジャー化

◆寺院であるにもかかわらず遊女を置いた有馬温泉

『摂津名所図会』国立国会図書館蔵

 こうして入浴という行為には、娯楽の要素も加わるようになってきた。それを決定づけたのが、武士の時代が到来した建久2年(1191)、有馬温泉に登場した「湯女(ゆな)」であり、この後、銭湯の歴史の核となっていく。

 奈良時代の僧侶行基(ぎょうき)は全国を行脚し、温泉を発見しては沐浴の功徳を説いて回った。そして有馬温泉に温泉寺を建立し、湯治療法による心身の回復を祈願した。以後、天皇や貴族たちに人気の温泉地となった。鎌倉時代の幕開けとともに、寺院でもある有馬温泉に入浴客の世話をする湯女が登場したのは、まさにセンセーショナルな出来事だったといえる。しかも湯女たちは、場合によっては遊女の役割も果たしたという。
「このシステムは奈良時代の功徳湯のパクリ。世話係の湯那(ゆな)(下級僧)の代わりにサービスガールを置き、彼女らが接客する旅宿を宿坊と呼ぶなど、宗教施設を隠れ蓑に“遊郭”が誕生したのです」。

 湯女が置かれたことでさらに隆盛を極めた有馬温泉。その人気ぶりは歌人の藤原定家が『明月記』の中で「大勢の尼さんが宿泊していて風呂にも入れない」と記している。それは室町時代でも変わらなかった。

雑誌『一個人』2月号より構成〉

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下川 耿史

しもかわ こうし

1942年福岡県生まれ、早大文学部卒。サンケイ新聞社出版局を経て,72年からフリーライター。性の風俗史や性の民俗史の研究を中心に活動している。著書に『エロティック日本史』(幻冬舎)『盆踊り 乱交の民俗学』(作品社)、『日本エロ写真史』『混浴と日本人』(以上ちくま文庫)など。


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