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ヴェノナ文書研究が暴いたスターリンの戦争責任

ソ連のスパイたちの対米工作が明らかに インテリジェンス・ヒストリー⑤

 実は、ルーズヴェルト民主党政権が中国やソ連と通じているのではないかという疑惑は戦前からありました。

 一九三九年、ウィテカー・チェンバーズという『タイム』誌の記者が、ルーズヴェルト民主党政権内部にソ連の工作員が多数浸透していることを、当時の国務次官補でホワイトハウスの治安専門家であったアドルフ・バールに報告しています。

 チェンバーズはソ連の軍情報部とアメリカ政府内の工作員グループとの連絡係を務めていましたが、独ソ不可侵条約やスターリンの大粛清に幻滅して党を離れたアメリカ共産党員でした。

 チェンバーズはバールに報告した内容を、その後FBI(連邦捜査局)にも伝えています。

ソ連のスパイだったアルジャー・ヒス

 一九四五年には、エリザベス・ベントレーという共産党員の地下活動家が党を離れ、政府内のソ連工作員の活動についてFBIに告発しました。

 ベントレーの告発は大陪審に付され、一九四八年にはベントレーとチェンバーズは連邦議会の下院非米活動委員会に呼ばれて証言しています。チェンバーズは非米活動委員会で、国務省のアルジャー・ヒスというルーズヴェルト側近の職員がソ連軍情報部のスパイであることを証言しました。

 しかし大陪審での審議は、ルーズヴェルトのあとを継いだ民主党のトルーマン政権の下で妨害され、チェンバーズは名誉毀損でヒスに訴えられます。

 チェンバーズが密かに保管していた、共産党員としての地下活動中にヒスから受け取った書類が公開されたために、かろうじてチェンバーズが裁判では勝ち、ヒスは偽証罪で有罪になりましたが、トルーマン大統領自らチェンバーズ証言を「偽情報」と決めつけ、リベラル系のマスメディアもヒスをかばってチェンバーズを叩きました。

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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