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東海大、神大、駒大…敗者たちの箱根駅伝

箱根駅伝ノート 第4回

 ゴール後、安堵したのが最終10区で順天堂大に迫られながらも、10位でフィニッシュした中央学院大だ。2区を予定していた高砂大地(2年)が当日変更で外れて、3区横川巧(2年)も不発に終わった。5区細谷恭平(4年)が5人抜きを見せるも、往路は10位の中央大に15秒届かず、芦ノ湖で細谷は涙を流した。それでも最後は、14秒という僅差でチーム初となる4年連続のシード権を獲得。「本音としてホッとしました。10番と11番では1年間の流れが変わりますから」と川崎勇二監督は冷静だった。

 前回、連続出場が「87」で途切れた中央大は再スタートになった。しかし、目標の「シード権」には届かず、15位でレースを終えた。就任2年目の藤原正和駅伝監督は、「単純に私の指導力不足。厳しい結果だったなというのが正直なところです。1回リセットしてしまったので、経験不足が出ましたね。目指しているところと結果は違ったので、明日から戦える集団になっていけるようにもう一度やり直したいなと思っています」と話した。

 理想と現実の狭間に揺れた大学があるなかで、うれし涙を流した大学もある。出雲9位、全日本7位から箱根で急上昇した早稲田大だ。主将・安井雄一(4年)が3年連続となる5区に出走。「最後の箱根は楽しもうという気持ちで走りました。区間賞は取れなかったですけど、自分の走りに悔いはありません」と区間新(区間2位)の快走で、チームを5位から3位に引き上げた。早稲田大は復路も善戦。最後は一般入試から入学した谷口耕一郎(4年)が日本体育大、東海大との3位争いを制して、笑顔で大手町のゴールに飛び込んだ。アンカー谷口を迎えた安井の目は涙で潤んでいた。

「出雲と全日本の順位からして、箱根もいい結果が望めないんじゃないかという声もあった。そのなかで最後は3位になれたのは走力だけでなく、気持ちや絆。信頼関係などが結びついたのかなと思います。この4年間にあったいろいろなことがこみ上げてきて、うれしい気持ちで一杯です」(安井)

 フィニッシュエリアの大手町には、箱根駅伝を目指してきた者たちの様々な感情が渦まいていた。どんな結果だったとしても、彼らが1年間歩んできた道のりはいつか素晴らしき青春の1ページになるはずだ。そして、また〝新たな1年〟が始まる。ノートに綴った〝思い〟を胸に刻んで。

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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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