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あの国民的コミックと「神道」をつなぐもの

“神道”が育んだ日本人の精神性 日本人が説明できない「神道」②

いまや世界に名を轟かす日本のアニメや漫画。なぜここまで世界を魅了したのか。そこには「神道」がもたらした日本人の精神性が深く関わっていることを『日本人はなぜ外国人に「神道」を説明できないのか』の山村明義が説明する。

「リアル」と「バーチャル」の両方に強い“神道”

 アニメや漫画と神道に共通するものは、「バーチャル」な部分と「リアル」な部分が両立しているところです。

 例えば、「世界に3億人以上の読者がいる」といわれる日本の大ヒット漫画「ONE PIECE」の作者である尾田栄一郎氏は、「ファンタジーの世界で、どこかにリアリティを求めるとすれば、それは人間の感情だと思っている。そこはしっかり守っていかないと、嘘っぱちになると思っている」と語っています。

 バーチャルな部分とリアルな部分の両立が上手いのが日本人だとすると、アニメや漫画の日本の力が理解できるかもしれません。

 

 一方、その日本人が2千年以上、大切に守ってきた精神性が「神道」です。
  神道では、神様の「御霊」や人間の「魂」の世界を大事にします。
 また、全国の神社には同じ神様の「御霊」が祀られ、その「分霊(ぶんれい)」や「分祀(ぶんし)」という儀式も神祭のなかでいまも執り行われています。

 例えば、応神天皇や神功皇后を御祭神に祀った八幡神社は、全国に約1万4千社があり、菅原道真を祀った天満宮や天神社は約1万社あるといわれています。

 

 これは簡単にいってしまえば、神様の「分霊(わけみたま)」が場所や時空間を超えてどこへでも飛んで行き、人々が欲しがるところへ降りていくと考えて良いでしょう。もちろん日本の神々は目に見えるものではないため、唯物主義の立場からは、完全に「バーチャルの世界」かもしれません。

 しかし、神社には「受験に合格したい」、「スポーツで勝ちたい」、「健康になりたい」、「商売繁盛になる企業経営者になりたい」などという人々の願いが込められています。 

 その願いを叶えるために、神社の神職は、いまもその神社に祀られている神様に向け、誠心誠意自らの魂を込めて神道の祭式を斎行するのです。

 いわば日本人は、数千年あるいは数万年の長きにわたって、人々の夢や願いを受け止めてきた「リアリティ」があったのです。

『日本人はなぜ外国人に「神道」を説明できないのか』より構成〉

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山村 明義

やまむら あきよし

作家、ジャーナリスト、神道史家

作家、ジャーナリスト、神道史家。昭和35(1960)年、熊本県生まれ。早稲田大学卒業後、金融情報誌など出版社勤務を経て平成2年に独立。 代表的な著書には、『神道と日本人』(新潮社)、『GHQの日本洗脳』(光文社)などがある。

 戦後のGHQによる日本占領史研究は、約30年前から日米両国で文献収集とオーラル・ヒストリーの取材・調査を行ってきたが、 最近では日本人が目指すべき「ポストGHQ体制」に強い関心を持ち、特に日本古来の伝統文化の継承を日本と世界に幅広く訴えかけてゆきたいと考えている。


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  • 2018.01.10