「過ちの理由を、絶対に他に求めてはダメだ」 なぜ本田宗一郎は愛されたのか。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「過ちの理由を、絶対に他に求めてはダメだ」 なぜ本田宗一郎は愛されたのか。

【連載】「あの名言の裏側」 第1回 本田宗一郎編(2/4) 本田宗一郎は「若気の至り」を無条件で認めた訳ではない

 しかし、本田氏は「物事すべてに限度がある」とも戒めます。

 「若い人は、何をしてもよい」といっても、そこには一定の限度があるということである。(中略)人や物に危害や迷惑を加えたり、遊びが過ぎて盗みを働くなど、これはもってのほかのことである。善意の他人に迷惑をかけることは、社会人として自由人として最大の犯罪だと思う。自分の行動のために他人の犠牲を強要しては絶対にいけないのである。
(『得手に帆あげて』)

 

 じっくりと教え諭すような一文です。そしてこれは、単に若い人に向けたお説教にとどまらず、いい年をした大人にとっても、改めて弁えなければならない苦言でもあるでしょう。

 社会には、その社会を維持するための法があり秩序がある。それを守らなければならない。自分の生命、財産、自由が尊重されることが必要である。権利を自覚して、義務を果たすことである。これを前提に、どんな行動にも責任をとらなければならない。過ちの理由を、絶対に他に求めてはダメだ。どんな場合でも、自分の行動は自分の意志で決定する人間でありたい。 他人に引きずられて、行動に突っ走るというくらい無責任で、恥ずべきことはない。(中略)自分の意志に反する提案だったら断固として拒否できる勇気を持つ人間でありたい。こうした基本的な考えを身につけたところに、行動の自由の限界を悟る良識がうまれるのであると思う。(『得手に帆あげて』)
 

 これら一連の指摘に触れると、たとえば、成人式で乱痴気騒ぎや迷惑行為をするような若者の所行が、いかに愚かで、幼稚で、無責任であるかがわかるというものです。

 また、余談ついでに付け加えるなら、かつて自分が働いた稚拙な反社会的行為やチンケな犯罪行為などを指して、「自分も若いころはけっこうヤンチャをしたものさ」などと自分語りをするオッサンがいたりします。が、大抵は愚にも付かない内容です。過去の自分を恥じて心から猛省しているのならともかく、どこかノスタルジックに、自分の行いを肯定するかのごとく振り返り、まるで“いい思い出”的にうっとりしたり、武勇伝のように自慢げに語ったりする姿は、極めて無様。若い人は「こうなったら終わりだ」と反面教師的に捉えて聞き流すのが正解でしょう。

 「どんな行動にも責任を取らなければならない」「過ちの理由を絶対に他に求めない」──個性を重んじ、多様性を認める時代だからこそ、いま一度、自覚しなければならない警句ではないでしょうか。

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漆原 直行

うるしばらなおゆき




1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』、『読書で賢く生きる。』(山本一郎氏、中川淳一郎氏と共著)、『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ担当。伊原直司名義)ほか。

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