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パールハーバー奇襲を成功させた二つの秘密兵器

針路、パールハーバー! 目標、戦艦!! ~アメリカ太平洋艦隊の一大根拠地を叩いた奇襲作戦にまつわる航空エピソード~ 第5回

日本によるパールハーバー奇襲はどのように準備され、実行に移されたのか。軍事的な時代背景とともに書き下されたオリジナル連載。

パールハーバーで着底し、激しく炎上する戦艦ウエストヴァージニア。同艦は91式航空魚雷改2を左舷に実に7本も被雷。さらに99式80番5号徹甲爆弾も2発被弾したが、幸運にも爆弾はどちらも不発だった。

「トラ、トラ、トラ!」の立役者

「ト、ト、ト、ト、ト・・・・」
 1941年12月8日0319時、攻撃隊総指揮官淵田美津夫中佐は、パールハーバーにほど近いワイメア湾沖で、全機に突撃を命ずるト連送を発信。続いて0322時、奇襲成功を告げる有名な無電略号のトラ信「トラ、トラ、トラ」を発信した。
 そして第1次攻撃隊の97式艦攻、赤城隊12機、加賀隊12機、蒼龍隊8機、飛龍隊8機の計40機から成る雷撃隊が雷撃を開始。鹿児島湾での猛訓練と浅海面雷撃に向く91式航空魚雷改2のおかげで、投射40本中、実に36本もの命中を記録している。

 だがその一方で、加賀隊の97式艦攻は12機中5機が未帰還となり、雷撃隊のみの損害率は実に12.5%もの高率となってしまった。
 また、淵田が直卒する97式艦攻、赤城隊15機、加賀隊14機、蒼龍隊10機、飛龍隊10機の計49機から成る水平爆撃隊も、99式80番5号徹甲爆弾による爆撃を開始。
 投弾全49発中11~13発が命中したものと判定されたが、99式艦爆による急降下爆撃との戦果の混同もあって正確な数字は判明していない。

 

 なお、水平爆撃隊は49機全機が無事に帰還した。
 同じ97式艦攻でも、水平爆撃隊に比べて雷撃隊の損害が著しく多いのは、低空を低速で敵艦に肉薄しなければならないため、敵の対空砲火に捉まりやすいからである。

 パールハーバー奇襲における日本海軍航空隊の全喪失機数は計29機で戦死54名。
 対してアメリカ側に与えた損害は、戦艦5隻撃沈(大~中破着底を含む)、3隻中破、軽巡洋艦2隻大破、1隻中破、駆逐艦2隻除籍、1隻大破に加えて、その他の艦艇数隻が沈没または大破。航空機は188機が破壊され、軍人と民間人合わせて2403名が戦死、1178名が負傷したとされる(各数字には異説あり)。これに加えて、各航空基地やハワイ海軍工廠の施設にも大きな被害が生じた。

 そしてこの大勝利に際し、特に装甲防御が堅固な戦艦多数を屠ったのは、紛れもなく97式艦攻が用いた二つの秘密兵器、91式航空魚雷改2と99式80番5号徹甲爆弾であった。

〈完〉

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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