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中国は「金正男擁立計画」を進めていた!

中国式の改革開放路線は許せなかった シリーズ!脱中国を図る北朝鮮③

なぜ、北朝鮮は日本に対して、威嚇行動をとり続けているのか? そもそも北朝鮮はなぜ、この様な国家になったのか? 中ロ情勢に精通する歴史家、田中健之氏が「周辺」から北朝鮮の本質を考察していく。新刊『北朝鮮の終幕』より10回にわたってお届けしたい。〈シリーズ!脱中国を図る北朝鮮③〉

金正男氏を暗殺した理由

 

 北朝鮮を改革開放路線に推し進めようとした張成沢は、金正恩の首を金正男氏に付け替えてでもその方針を貫こうとしました。金正男氏もまた、北朝鮮が生き残るためには、「社会主義体制を維持しつつ経済の改革開放を進める中国式のやり方しかない」と再三、唱えていました。

 また中国も先軍政治の下、核とミサイル開発に北朝鮮が突き進み、朝鮮半島が緊張に包まれるよりも、改革開放路線によって安定することを長年望んでいました。中国のその方針は、今日でも一貫しています。

 張成沢の粛清後も、中国による金正男氏擁立計画は秘密裡に進められていたものと思われます。

 その一つが〝北朝鮮亡命政府〟の樹立に伴い、金正男氏をその首班に擁立しようという構想があったと言われています。

 北朝鮮亡命政府の樹立計画は、張成沢に極めて近い人物で、朝鮮労働党の秘密資金を管理する三十九号室の高位幹部であったと言われている人物を中心に進められているようです。

 この人物は2015(平成27)年に第三国を経由して、家族と共に韓国に亡命、その翌年には家族を連れてアメリカ・ワシントン入りして、現在アメリカに亡命中です。

 北朝鮮という国家の存在を認めていない韓国では、この北朝鮮亡命政府の樹立を承認することは出来ません。なぜならば、その存在を認めてしまえば、北朝鮮という国家の存在も認めてしまうことになるからです。そのため北朝鮮亡命政府は、アメリカで樹立を進める計画だということです。

 
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田中 健之

たなか たけゆき

 昭和38(1963)年、福岡市出身。歴史家。日露善隣協会々長。拓殖大学日本文化研究所附属近現代研究センター客員研究員を経て、現在、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員、ロシア科学アカデミー東洋学研究所客員研究員、モスクワ市立教育大学外国語学部日本語学科客員研究員。 昭和58(1983)年に中国反体制組織『中国の春』の設立に関与し、平成元(1989)年6月4日に生じた天安門事件を支援、亡命者を庇護すると共に、中国民主運動家をはじめチベット、南モンゴル、ウイグルの民族独立革命家と長期にわたって交流を重ねている。 平成3(1991)年、ソ連崩壊と共にモスクワに渡り、ロシア各界に独自の人脈を築く。 一方、幼少より玄洋社、黒龍会の思想と行動に興味を抱き、長年、孫文の中華革命史およびアジア独立革命史上における玄洋社、黒龍会の歴史的、思想的な研究に従事、それに基づく独自の視点で、近現代史、思想史を論じている。 玄洋社初代社長平岡浩太郎の曾孫に当たり、黒龍会の内田良平の血脈道統を継ぐ親族。 著書に『昭和維新』(学研プラス)、『靖国に祀られざる人々』(学研パブリッシング)、『横浜中華街』(中央公論新社)、『実は日本人が大好きなロシア人』(宝島社)その他、共著、編著、雑誌など多数。



 


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