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スーチー氏「ロヒンギャ」解決を阻む3つの壁

【ロヒンギャ】を根本敬氏が徹底解説2/3

3つめの壁「ロヒンギャの同意」

根本…おそらく「ベンガル系ミャンマー人」や「ラカイン・ムスリム人」などの新しい枠を作り、ロヒンギャがそれを受け入れるのであれば正規の国籍を与えましょうという話になるのではないかと思っています。これが我々から見ると現実的な着地点ではありますが、一方でロヒンギャから見れば自分たちの名前を否定されていることになる。名乗る権利は人権のイロハのイで、自分の名前を拒否されることは大変な人権侵害です。それは民族名も同じです。

シズカ…ロヒンギャの人たちがその新しい枠を否定する可能性もありますよね。

根本「我々は昔からロヒンギャなのだ」と言われればそれは尊重しないといけない。だが、そうするとミャンマーの世論も軍も受け入れない。ここが最後の壁ですね。ロヒンギャがそれを認めなければこの先を宙ぶらりんの状態が続くのではないでしょうか。これまで通りの話になってしまって問題の火種は消えないままになってしまいます。

トオル…どちらかが折れて、妥協してくれればいいんだろうけど…。

シズカ…この問題に関しては、それもなかなか難しそうね。

根本…もう一つの選択肢としては一旦別名の民族名を認めてもらって、その後きちんと話し合いましょうという流れもあるかもしれません。長期にわたって検討しましょうという条件を付して納得してもらう。ただし、これでロヒンギャ側が折れてくれるかはわからない。国籍を与えるなんてとんでもないという人が多くの世論の声なので、やはりアウンサンスーチーさんの難しい立場はかわりません。

シズカ…いずれにせよ焦らず中長期的に考えないといけないですね。

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根本 敬

ねもと けい

1957年(昭和32年)生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程中退。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授などを経て、上智大学外国語学部教授。専攻、ビルマ近現代史。


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