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天下人が名古屋を「都」にしなかった理由

日本の異界 名古屋⑬

成功したら帰りたくない街

 秀吉などは、中村のサルだがや、と言われてしまう。殿様の草履をあたためとった奴が関白様だと言われても、どうしたって昔の姿を思い出してまうがや、と言われる。だから秀吉は名古屋に帰りたくなかったのではないだろうか。

 家康ならば、那古野城の人質だがや、と言われてしまう。そのあと今川の人質だわさ。人質殿が将軍様だと言われても、実感がわかんなあ、というのが名古屋人なのだ。

 というわけで、名古屋は天下を取るのに絶妙の位置にあるのだが、天下を取ったあと帰りたいところではないのだ。戻ったら、ツレ・コネクション(なれあい)の中に引きずり落とされてしまうから。

 それで名古屋は、とうとう日本の都になることがなかったような気が、私にはする。

 成功したら帰りたくない街、それが名古屋なのだ。

清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)では、尾張藩の歴史や奇才藩主徳川宗春と吉宗にまつわる話などがユーモラスかつわかりやすく紹介されている。

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  • 清水 義範
  • 2017.07.08