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「トンデモ名古屋論」の陰に日本の知的頽廃

知識人・呉智英が放つ極上の知的エンターテイメントに注目!

「ブラタモリin名古屋」の第1弾、第2弾の放送が高視聴率で、ついに第3弾の放送が11月18日に。名古屋ネタを冠した番組や書籍がいままた人気を博している。しかし、その人気ネタもどこかご当地自虐ネタが溢れているのはいつもの通り。「名古屋は性信仰と奇祭が溢れる?!」「まったくもって文化不毛の地である?!」などデタラメも多い。 名古屋生まれで名古屋育ち、名古屋在住の知識人・呉智英氏が、そんな「トンデモ名古屋言説」を振りまく評論家や研究者を新刊『真実の名古屋論〜トンデモ名古屋論を撃つ』でぶった斬った理由を明かした。

名古屋は日本第三の都市圏の中核

 

 私は名古屋で生まれた。父方の本籍も母方の本籍も名古屋だし、親類もほとんどが愛知、岐阜など名古屋圏(東海圏、中京圏)に住んでいる。私は小学校から高校まで名古屋の学校に通った。その後東京の大学に進み東京で暮らしていたが、両親が高齢になったので介護のため郷里に帰った。1999年のことである。2006年に父が亡くなり、2016年に母が亡くなった。しかし、私はそのまま名古屋に住んでいる。この間(かん)、仕事の関係で東京と京都には頻繁に往復しているが、その中間にある名古屋に住んでいることは極めて便利である。

 名古屋は日本第三の都市圏の中核であるから、買い物、病院など生活環境も良く、図書館、美術館など文化環境も整っている。歴史が古いところだから伝統文化も豊かである。それでいて土地に余裕があるため家賃も安い。

 こう書くと、私を郷土愛が強い人間だと思う読者がいるかもしれないが、私はあまり郷土愛が強い方ではない。生まれ育ったところだから自然と親しみがあるといった程度の郷土愛はあるが、郷土愛を強調することにはむしろ嫌悪感を覚えるほどである。ただ、客観的に見て、私にとって名古屋に住むことは極めて便利で快適であるということだ。

 
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呉 智英

ご ちえい

評論家。昭和21年(1946年)、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業。評論の対象は、社会、文化、言葉、マンガなど。日本マンガ学会発足時から十四年間理事を務めた(そのうち会長を四期)。東京理科大学、愛知県立大学などで非常勤講師を務めた。著作に『危険な思想家』『現代マンガの全体像』『現代人の論語』『吉本隆明という共同幻想』『つぎはぎ仏教入門』ほか。名古屋市在住。


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